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経済・株式・資産

第106話 中小企業の事業承継(9)

あなたの会社と資産を守る一手

大都市及び近郊の製造業者が本業をやめて、所有する工場等を利用して不動産管理事業に特化するというケースが最近よくみられるようになりました。今回は事業承継とは少しずれますが、本業をやめたことによって機械などが不要となり、それを譲り受けた場合の問題について書いてみます。

私自身、いったん破綻し再生させた会社の経営に財務担当としてかかわっているのですが、そのなかのある会社が増収増益を続けており、それができることの大きな要因として、本業をやめる会社の顧客をもらう。不要になった機械などを譲り受ける。優秀な人材を当方で引き受けるといったことがあげられ、中でも機械などの資産の譲り受けはよく発生するため実務上の扱いを書いてみようと思ったしだいです。

まず、譲渡する側・法人、譲渡される側・法人で話をすすめます。譲渡する側の法人がその業務をやめる、または廃業する前提で機械等を譲渡するときは一定以上の価格で売れるものでない限り、ほとんどが運搬費を譲り受ける会社が持つという条件で無償で、あるいはきわめて低い金額で譲渡されるという例がほとんどですが、税務を考慮した場合どうしたらいいのかということが一番の問題になります。

法人の低額譲渡については法人税法37条7項と22条2項に記載(注1)がありますが、税法上の考え方では無償譲渡されても、適正価格で売られたものと考えるようです。したがって、0円で機械を譲渡された場合(運搬費も0円と仮定)、適正価格が500万円なら500万円の利益が譲り受ける法人に発生することとなります。当然、譲り受ける法人が黒字ならその分法人税等の負担が増えることになるわけです。
下記の図で実際の例を使い、仕訳がわかるようにしておきました。

では、適正価格とは何かというと、税法の判例などは土地・建物、株式を扱っているのがほとんどで機械などの譲渡の例が見つけられません。それではいつもはどうしているのかというと、中古機械の販売業者にその機械を売買した場合の見積もり査定をしてもらいそれを根拠としています。

手順としては当該機械の「固定資産減価償却内訳明細書」をもらい、査定業者に機械を見てもらい査定してもらいます。無償譲渡で考えた場合、その査定金額を譲渡価格として、運送搬入費用の差額を受贈益とするというものです。めんどうくさい作業のようですがこれをやらないと税務上のリスクをかかえることになります。

ところで、税法の判例・裁決では土地・建物や会社株式の低額譲渡の事例が多いと書きましたが、土地・建物や会社株式を低額譲渡するケースでは、何らかの利害関係のもとに意図的な思惑をもって行なわれることが多々あるのです。これが公になって問題視されると「税法上の見解の相違」というふうに呼ばれることになります。だから土地・建物や会社株式の低額譲渡をするなら税法を勉強して慎重に考えて行なわないとたいへんなリスクに直面することになりえるのです。

rule105.gif

注1:参考

法人税法37条7項

法人税法22条2項

*支配関係にある会社間の無償譲渡は別の扱いとなります。

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