オーナー社長が突然亡くなった場合、会社が大幅な資産超過、黒字企業であるにもかかわらず事業承継が難しいケースがあります。
では、どんなケースが難しいケースに当てはまるかと言うと、下記のようなバランスシートの場合です。
このバランスシートでは、純資産の中にある利益剰余金が極めて多く、機械設備や車両、不動産というかたちで資産になっていることがわかると思います。 それゆえに現金・預金、売掛金といった流動資産の比率が低くなり、固定資産に資産の比重がかたよっているものです。
一般的に税制面などを考慮した理由から資本金が1,000万円という中小企業は多く、資本金が1,000万円で、この会社の場合2億9,000万円もの利益剰余金があることになります。 利益剰余金は、企業が生み出した利益を積み立てたお金で、会社内部に蓄積されているものですが、 実際に借方側の資産として、現金や預金、売掛金といった流動資産で蓄えられているとは限らず、生産に必要な機械、工場などの固定資産に蓄えられていることも多いのです。
具体的なイメージで言えば都内23区内にある町工場がこれに該当します。
では、なぜこのようなケースでのオーナー社長死亡による事業承継では困難がともなうかと言うと、会社の価値が資産超過部分、 上記バランスシートで2億9,000万円が株式の最低価値となり、個人資産以外にそれも相続財産になるからです。
会社の固定資産を売却すれば簡単にかたずづくことなのかもしれませんが、製造に必要なものである場合そうもいきません。
かくして事業承継者である子供は悩むことになります。
相続人が数人の子供と、配偶者で、オーナー社長の事業を承継する子供と配偶者、個人財産だけを相続する子供ということになった場合、相続財産の配分でもめたり、さらに相続税の支払に関して事業承継者はさまざまな要素を考えなければならないことになります。そして、債権者である銀行との交渉も必要になります。
もちろん、そのために平成30年4月1日からの事業承継税制改正の「特例承認計画」(注1)という制度ができたわけですが、相続がからむと思うようにいかないこともでてくるものです。
注1:参考、国税庁、事業承継税制特集