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第140話 バイデン政権、米中関係の悪化に歯止めをかける

中国経済の最新動向

 今月20日、アメリカのバイデン政権は発足してから丸1カ月を経った。新政権の下で、米中関係はトランプ前政権時代に比べ、急速な悪化に歯止めがかかっていることが明らかだ。これは米中没対話から首脳会談の再開へ、対中制裁連発から制裁凍結へ、対立一辺倒から一部分野の米中協力へ、という3つの変化に裏付けられる。

 

バイデン&習近平による米中トップ会談の意味

 2月9日、筆者は富士通次世代リーダー研修プログラムにて講演した際、米中首脳会談につき、次のように大胆な予測を行った。

 

 「米中トップ会談は契機が必要だ。中国のお正月にあたる春節お祝いは、バイデン大統領にとって、米中首脳会談を実現させる良い契機となると思う。春節(12日)前後に、バイデン氏は習近平と米中首脳電話会談を行う可能性が極めて高い」と

 

 2日後、筆者の予測は的中した。2月11日、中国春節の大晦日にあたるこの日に、バイデン米大統領は中国の習近平国家主席と互いに新年お祝いをした後、2時間にわたる電話会談を行った。前回のトランプ大統領と習近平国家主席による米中首脳電話会談(昨年3月27日)以来、11カ月ぶりの出来事だ。会談の内容は別として、今回の長時間にわたる両国首脳(電話)会談の実現は、実に意義が大きい。

 

 実は、バイデン氏はオバマ政権副大統領在任中、習近平氏と合計8回も会談したことがある。2人はいわゆる「古い友人」関係にある。バイデン氏との会談回数に限って言えば、G7を含む主要国の現役トップの中で、習近平氏の右に出る人がいない。正にバイデン大統領が述べたように、習氏に「電話会談しない理由がない」(2月7日発言)。

 

 実際、米中首脳会談に先立ち、ブリンケン米国務長官は2月5日、中国外交トップの楊潔箎(よう・けっこ)共産党政治局員との電話会談が行われた。米中外交トップ会談は、昨年6月17日にハワイで行われたポンペオ&楊潔箎会談以来、8カ月ぶりに再開したのだ。 

 

 周知のように、トランプ政権は2020年大統領選挙に勝つために、昨年後半以降、中国共産党を標的とする「反中キャンペーン」を大いに展開し、対話せずに対立一辺倒の方針を取ってきた。そのため、首脳会談はおろか、外交・軍事・経済・技術・文化教育など実務レベルの米中会談もほとんどすべてが途絶えていた。

 

 バイデン新政権が誕生してから1カ月経たないうちに、米中首脳会談及び両国外交トップ会談の実現は、アメリカ前政権のイデオロギー路線から現政権の現実路線への回帰にほかならない。トランプ政権の「対立一辺倒」の極端な手法と一線を画し、「対立するが対話もする」というバイデン新政権の対中新外交の特徴が鮮明になってきた。

 

制裁連発から制裁凍結へ

 トランプ政権の4年間、アメリカ政府は中国を最大の脅威と見なし、その急速な台頭を阻止するために、累計で3900件超の制裁措置を発動した。制裁対象は中国の政治、軍事、外交、経済、科学技術、文化・教育などほぼすべての分野に及ぶ。一日あたり3件の計算だ。

 

 バイデン大統領誕生後1ヶ月の間、アメリカ政府は対中強硬を維持するものの、新たな制裁措置を見送りにしている。将来、再び対中制裁を発動する可能性があるが、当面は制裁凍結が続くだろう。

 

 実際、制裁は「諸刃の剣」のようなものだ。対中貿易戦争を例にすれば、史上最大規模の対中関税制裁は中国経済に大きなダメージを与えたのは事実だ。しかし一方、アメリカ側にも大きな被害をもたらしている。米調査機関の調べによれば、米中貿易戦争は米側に673億ドルにのぼる損失を与え、数万人の雇用を失ってしまったという。

 

 また、米国商会が2月17日に発表したレポートによれば、米中が完全に分断された場合、米側に数千億ドルの巨額被害がもたらされ、航空、半導体、化工、医療器械などの分野は深刻なダメージを受けると、同商会が警告している。

 

 米中貿易戦争の結果から見れば、関税制裁の効果が疑問視される。中国税関の統計によると、2020年中国の対米輸出は前年比7.9%増の4,518億ドル、貿易黒字が7.1%増の3,169億ドルにのぼる。トランプ政権誕生前の2016年に比べれば、それぞれ17.3%増、26.4%増となる(図1を参照)。正に皮肉の結果と言える。

 

chin1401.png

出所)中国税関統計により沈才彬が作成。

 

 バイデン新政権の下で、トランプ関税をすぐ撤廃することが難しい。しかし、いずれ米中貿易戦争が見直される時が来ると、筆者は見ている。

 

気候変動などの分野、米中協力へ

 アメリカの民主党政権には、自由、民主、人権など民主主義の価値観を重視する伝統がある。バイデン政権も例外なく中国の人権侵害問題を厳しく追及する姿勢が続くと予想される。具体的に、新疆ウィグル族問題、香港問題、台湾問題及び南シナ海問題などにおいては、バイデン政権は対中強硬を維持すると見られる。

 

 しかし、トランプ政権の「米国一国主義」と一線を画し、国際協調路線への回帰を明確に宣言したバイデン新政権は、気候変動やコロナ抑制、軍縮、イラン核協議、北朝鮮問題などの分野では、中国政府との協力・協調を重視するだろう。バイデン政権の下で、中国に対し、「対抗・対立一辺倒」から「協調・協力もする」への方針転換が避けられないと思う。

 

 要するに、米中首脳会談の実現、新たな対中制裁の凍結、気候変動など米中協力への方針転換に示されるように、バイデン政権の下で米中関係の悪化に歯止めがかかっている。緩やかではあるが、米中関係がポジティブな方向に向かっているのは確かだ。日本企業はこの新しい動きを見逃してはならない。 (了)

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