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第36回 おせっかいなくらいでちょうどいい時代:「日特エンジニアリング」

深読み企業分析

日特エンジニアリングは自動巻き線機で世界トップシェアの企業である。巻き線機はコイルの製造機であり、コイル自体は電気回路の主要受動部品だが、それ以外にもモーターやセンサーなどにも必要不可欠な部品である。
 
コイルは電子機器の小型化、高性能化によって、ますます小さなものが必要になっている。また、モーターも自動車の自動化など小型化、軽量化が急速に進んできた。コイル自体が微細化するに伴って、コイル単体を組み上げ、搬送するという作業にも緻密さが要求されるため、連続した装置内で前工程から後工程まで進めるように装置自体のモジュール化が要求されている。
 
しかし、個々の装置メーカーはそれぞれの装置では専門業者ではあるが、一連の装置を1社で納入できる企業はない。そこで、それぞれの専門業者とコラボし、コーディネートする役割を中心企業が行う必要がある。そんな企業の1社が同社である。
 
 
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しかし、装置自体が精密化、モジュール化することで、顧客の開発した製品の量産化が難しいケースも出てくる。顧客サイドからすれば、顧客のユーザーが求める性能、機能を満たそうとして新製品を開発する。しかし、その新製品を量産化する段階で、量産化自体が難しいという壁に突き当たることが増えてきたのである。
 
そこで、同社ではむしろ自らの顧客の製品を同社自体が量産化しやすい形で開発し、顧客に提案する方向を志向し始めている。具体的にはモーターの開発を行っているようであるが、同社が開発したモーターを顧客がユーザーのスペックに合わせて改良し、同社に量産化装置を依頼する形になる。すでに数社から好感触を得ており、共同研究もスタートし始めているようである。
 
一昔前であれば、装置メーカーは装置メーカー、部品メーカーは部品メーカーと役割が分かれているのが当然であったが、さまざまな機器が高精細化して行く中で、より川上から川下まで一貫して、コストを削減し、開発を迅速化させなければならないような時代に入ってきたと言えよう。
 
有賀の眼
 
本来であれば顧客のやるべき仕事に自ら深くかかわるという行動は、実は様々な業界で大きな差別化要因となり、企業の盛衰に大きな影響を及ぼしている。
 
流通先進国ではなくなってしまったトラディッショナルな卸が日本では存在を高めているが、まさに顧客の仕事まで取り込むという貪欲さが生き残りの大きなキーとなっている。特に加工食品小売業で顕著であり、今や食品小売業にとってなくてはならない存在である。
 
加工食品卸売業ではメインビジネスであるロジスティクスにおいて、顧客の利便性を高める工夫をして、自らの存在価値を高めてきた。ロジスティクスはメーカーの商品をローコストで小売業に届けるということが主要業務である。しかし、さらに加工食品卸売業では付加価値を高めている。顧客の通路ごとにケージを分け、しかもケージへの商品の積み方も取り出す順番になっている。こうすることで、顧客の人件費が大きく低下することになる。
 
これはほんの一例に過ぎないが、考えてみればこれはまさにおせっかいである。中には、そんなことは顧客の業務範囲ではないかと考えた卸売業もいたことであろう。しかし、現在すべての卸売業がそのことを当然のように行っているわけであるので、行わなかったところは消えて行ったということであろう。
 
日特エンジニアリングの目指している顧客の製品を共同で開発するという発想は、おせっかいと言えば言えることであるが、まさに「おせっかいなくらいでちょうどいい時代」になってきたのではなかろうか。
 

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