日本経済新聞の連載「私の履歴書」に、セブン&アイ・ホールディングス会長の鈴木敏文会長が登場し
「母のしつけは厳しかった」と述懐している。
土地持ちで あり人手は十分にあったが「毎朝子供たちは庭の掃除を終えないと食卓につけない。
休日もニワトリやウサギの餌やり、養蚕期には桑の葉を摘んできて蚕の世話」をしなければならなかったそうだ。
かつての日本におけるエリート層のキチンとした躾をみる思いがした。
戦争に敗れた日本は過去の価値観を否定し、物質的な豊かさを求めて邁進した。
今では世界有数の金持ち国になったが、まだ「成金」で豊かさのノウハウを身に付けていない。
豊かな時代、どう子供を躾け、どう子供の「やる気」を引き出し、
どう社会に貢献する「二世」を育てあげるのか未だに模索中である。
金持ち先進国の欧米エリート層の子育てには、日本のような価値観の断絶がなく、参考になる点が多い。
特に「オールドマネー」を誇る家は決して子供を甘やかさない。
教育書「エミール」にあるように
「子供を不幸にする一番確実な方法は、いつでも何でも手に入れられるようにしてやることだ」を熟知している。
たとえ何人使用人がいても身の回りのことは自分でさせ、手伝いを子供に課し、
それを果たさなかった場合は「小遣いから相応の支払いをさせる」家さえあるほ どである。
子供を意識的に厳しい環境に晒させる。
何であろうと最後まで自分でやりとげさせて「達成感」を持たせ、それをモチベーションにつなげる。
家訓を作ったり奉仕活動を通して自分たちの価値観を伝える。やる気の高い子供を育てるノウハウ、知恵がそこにはある。
かたや成金はどうするか。
「自分は金で苦労したからそんな思いは子供にはさせたくない」と好き放題にさせる。
愛情というよりは、自分の心の飢えを子供を通して満たしているのに気づかない。
世界各国で行われた調査によると資産の65%は二代目で、三代目でなんと90%なくなるという。
「成金」止まりということのようだ。
榊原節子