『代々続くウルトラ・リッチ「お金づかい」の知恵』を上梓した。メインテーマは、どういう資産家ファミリーが長続きするのか、そこにはどんな知恵が働いており、どんな仕組みがあるのかだ。読んでもらえば解るが、普通の人誰にでも応用でき役に立つ示唆やヒントが沢山あるはずだ。
世界の資産家たちをみてみると代々続くファミリーと成り金には明らかな違いがある。
5代を超えて繁栄するファミリーの特徴は「語り伝えがしっかしていること」にあるといっていい。つまり継承を成功させる大切な要素は「財的資産ではなく家族の価値観などの無形資産に重きを置く」ことなのである。面白いことに、財的資産のみを追求してしまうと家族の結束にほころびが生じたりして、却ってお金を失っていくことになる。反対に、家族の価値観・祖先のエピソードを語り伝え、みんなが集まって話し合う習慣やイベントづくりに努力している場合、メンバーとしての自覚・誇りが確固としたものになり、ファミリーがそして一族の結束力が保たれ繁栄へと繋がる。
ロックフェラー家のモットー「恵まれているものの務めとして人類の福祉に世界的規模で貢献する」は初代ジョン・ロックフェラーの教えである。またジョンは16歳で働き始めてから、収入と支出を洗濯代、下宿代から日曜学校に寄付した1セントに至るまで記録する習慣を守り(その帳簿は現在も大事に保存されている)、記録を取ることはロックフェラー家の家風ともなっているそうだ。これらの他、定期的に一族の集いをもつことなど、もろもろの努力があってこそ資産を枯渇させることなく一族の絆を保っているのである。勿論ファミリーオフィスをフル活用した一族資産の結集、効率的な資産運用にも怠りがない。
ロスチャイルド家の場合はいまだに金融やワインのビジネスを実際に行っている。彼らの行動規範はファミリーの家訓である「協調」「完璧さ」「勤勉」である。また初代ロスチャイルドであるマイヤーの死の床での教訓「結束しているかぎり強いが、離ればなれになれば繁栄の終わりが始まる」は、現在に至るまで硬く守られている。
オーナー一族の中には幾多の困難を乗り越えてきた人たちがいる。修羅場に遭遇したとき支えとなったのがファミリーの信条であり、先祖を含むファミリーに対する想いだったという。
勿論初代のみならず各世代が其々の貢献をしてこそ一族の力強い展開がはかれる。実際世の中の急激な変化に対応して新たに家憲や家族協定をつくり、新しい時代のファミリー・一族運営の軸のつくり直しをする場合もある。
榊原節子
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