menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

後継者

第100回 最終講 大局観

欧米資産家に学ぶ二世教育

この連載を始めたのが2010年5月、今回の100回目で終了させていただく。連載のテーマが何故「欧米資産家に学ぶ二世教育」になったのか、今となっては定かでないが、1995年発刊の拙著『ボーダレス時代の資産運用法』で欧米のエスタブリッシュメントの子弟教育の一章を設けており、2001年に上梓された『金銭教育』の副題は小遣いから資産家の二世教育までとなっているのでお声がかかってきたのだろうか。

 
その後、資産管理の現場を離れ大学で教えることになるのだが、この連載でも、大学院大学の授業でも、そしてはるか以前に終えた子育てでも、私が強調してきたことは「自分の頭で考える」と「大局観を持つ」という2点であったと思う。
 
自分の子どもには「巨人と阪神のユニフォームはなぜ違うのですか、理由を10挙げて」「今までにない新しい遊びを考えついてください」「おじいさんの子どもの頃と比べて今のいいところ、嫌なところは?」など非常に素朴な自家製のワークブックを作ったことがある。
 
現在教えている学生とは対話型の授業を心掛けている。突飛な事も聞くので否応なしに頭をひねりまわして答えなくてはならない。海外との比較や今後の見通しを聞くことも多い。「大局観」は、各国や地域の事情を知ることで養われようし、歴史上の知識からも育まれよう。未来に開花する技術への理解も肝要となろう。古典への造詣を含む幅広い教養がキーポイントだろうか。
 
日本の人工知能(AI)の第一人者である松尾豊氏は、将来予想されるAI中心の社会で求められる人間像として「コミュニケーション力があり、互いに助け合うことができ、しかも歴史などの知識がある教養人」と述べた。マスコミ等を通して文明文化論を展開する上野景文氏(元駐バチカン大使)によれば、アメリカに代表される一神教のメンタリティーは大局観や創造性という面で優れているのに比べ、多神教的メンタリティーを背景とする洗練されたデリカシーの持ち主である日本人は、個別の対応に優れている反面、大局観を持つのを苦手とし、異なる文明に育った人をまとめるとか、議論、争いや交渉の場で苦労するという。
 
大局観を持つことは経営者にとって必須だ。特に変化の激しい、プロダクトライフサイクルが短くなった昨今においてはなおさらである。大きな見通しを持っていないと、どこで自分の判断が誤ったかに気づけない。異なる文明の人、そしてAIとの共生するためにも大局観は必要ということであろう。
 
だんだん世の中の変化のスピードが増すにつれ、苦労して構築した大局観もあっと言う間に外れてしまうこともあろう。しかし、自分の頭で考える力を養っておけばそれを修正してまた新たな大局観を構築していくことができるというものである。
 
 
                       ライフスタイルアドバイザー 榊原節子

第99回 世界のビジネスリーダーが実践するマインドフルネス・プログラム前のページ

関連記事

  1. 第91回 嫌われる「上から目線」

  2. 第6回 社会貢献と二世教育

  3. 第41回 あなたのお子さんは生き延びられますか?

最新の経営コラム

  1. 第183回 菊寿司 @福島県相馬市原釜 ~地魚主体の握り

  2. 第七十一話_禁断の組み合わせから地域活性化へ - 和歌山県田辺市のうなぎ販売展の革新的ビジネスモデル

  3. 第179回 米国に制裁されても反米しない華為

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. キーワード

    第114回 SHEIN(シーイン)
  2. ビジネス見聞録

    経営に役立つ「色」の世界〈空間編1〉「色に対する思考の整理」
  3. 社員教育・営業

    第25話 目標は楽観的に 計画は悲観的に
  4. 経済・株式・資産

    第58話 手元キャッシュを最大化する経営(4)
  5. 後継者

    第69回 嫁姑問題 ─ 義理の家族への対応
keyboard_arrow_up