日経新聞夕刊のコラム「こころの玉手箱」に登場したボストン・コンサルティング・グループ日本代表水越豊氏。家は裕福な方だったが、父親が厳しく、教育費用は自分で工面するよう言われたそうだ。親から借りた高校の学費は、育英会と同じ条件で返済し、大学もアルバイトで稼ぎながら自力で卒業。「厳しく育ててもらって今は感謝している。」と述べている。
これは日本においては稀有なケースで、経済的に余裕があるなら親の負担が一般的だ。家族主義の伝統を持つ、中国、韓国、日本以外では自動的に「大学費用は親負担」とはならないようだ。
北欧諸国など国家が面倒をみるというところもあるし、個人負担の国、例えばアメリカでは、経済的余裕がある場合でも並べて親が100%払うわけではないようだ。高校時代からアルバイトをし、夏休みも大学の学費を稼ぐために働く。カナダの友人の親は手広くビジネスをしていたが、「大学費用の20%は子供負担」という家の決まりがあり、高校時代、放課後は毎日ガソリンスタンドで働いて費用を貯めたそうだ。オーストラリアの友人は大学の費用は全部自分で算段したし、これは「誇りの問題だ」と言っていた。
授業料高騰の折、全額というのは無理にせよ1割でも2割でも自分で払うとなれば、「元はとってやるぞ」と授業に対する姿勢だって貪欲になるのではないだろうか。
全面的に奨学金やアルバイトで授業料・生活費を賄うとなると厳しい。稼ぐのに精一杯で勉強に充てる時間が少なくなるかもしれない。奨学金も貸与型のだと、のちのちまで返済負担が重くのしかかる。デフレ進行で就職難、親の収入減が続いたため奨学金の未回収率が大幅に増えているのが現状だ。大学費用は親が払って当然だという前提を変えなければ、今後家計への負担が増え続け、親は自身の老後資金に支障が生じてしまうことになる。
教育費用の問題はアメリカンドリームを誇る米国でも、授業料高騰、若年層の失業問題等々、結果として、卒業の奨学金負担が重くのしかかり、貧困が世代を超えて受け継がれようとしている。 ライフスタイルアドバイザー 榊原節子