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後継者

第82回 自分を立て直す事を最優先する

欧米資産家に学ぶ二世教育

会社が危機に陥ったとき、家庭内で大事件が起きた時、心身に動揺をきたし、食べる気さえこらない、すごく疲れているのに眠れないといった状態になってしまうかもしれない。そうした時の対応に参考となるエピソードがある。

大災害を2度も経験した人の話しである。彼女は阪神淡路大震災とニューヨークの9.11(世界貿易センタービル崩壊)双方に遭遇した。
 1995年の阪神淡路大震災のときは西宮にいて被災。前夜一緒に飲んでいた友人は死亡し、彼女はその遺体を掘り出すことになる。大きなトラウマを受けるが、海外よりの救助犬の通訳の仕事をすることができた。よりひどかったのが2001年の9.11事件。当時ニューヨーク世界貿易センタービル北棟の79階で働いていたそうだ。
 
先に隣の南棟に飛行機が突っ込み、「すぐ階段で避難するよう」場内アナウンスが流れ、彼女は上司と一緒に階段を下り始める。50階まで来たところで今度は「もう大丈夫だから戻れ」の場内アナウンスがあり上司は即オフィスに引き返した。彼女は「1階まで降りて行ってコーヒーでも飲もう」と降り続けた。これが運命の分かれ道だった。
 
彼女が32階に到達した時、大爆音とともに飛行機が北棟に突っ込み、彼女は大衝撃を受けるが助かる。しかし、衝撃を受けた後の記憶は未だに途絶えたままだったそうだ。上司は死亡、「なぜ一緒に連れていかなかったの」と夫人に泣かれ、虚無感、罪悪感に苛まれる。夜は悪夢に魘される。一年間全く周囲に心を閉ざしてしまい、家庭も破綻。「ロボットのようにただ家とオフィスを往復した」と述懐する。精神科医のカウンセリングも無効だった。
 
そんな時ユダヤ人のビジネスマンと知り合い、彼から教えて貰った「ユダヤの知恵」は彼女を急速に回復へと向かわせた。その言葉は有名なユダヤのラビ(牧師)の言葉なのだが、意訳すると、「まず自分を立て直せ」「次に愛するものに目をむけること」「そしてそれをすぐやれ」というメッセージであった。民族の歴史で何百、何千回と住まいを追われるなど、幾多の災難を潜り抜けてきたユダヤならでの知恵である。
 
 自分の心身の健康をまず回復しなければ他人は助けられないということだ。「死んだ人に申し訳ない」とか、「被災した人の事を絶えず気に掛けよう」ということを一時やめてもまず自分を立て直すことを最優先するべきだということである。普段通りの生活をする、体を動かす、きちんとした食事をとるなどをして体制を整える。それから家族を建て直し、コミュニティーを、国を建て直す。つまり、「愛するものに目をむけること」に取り組む。しかも「すぐやること」。この文章にもユダヤの悲劇をみることが出来る。明日はもう迫害されるかもしれない命、やるべきことは今日やってしまおう、という教えである。
 
実際この「ユダヤの知恵」で彼女は健康を取り戻しただけでなく、これがきっかけで世界中のユダヤネットワークにつながるようになっていく。それが今の彼女の仕事になった。
自分の心身の健康が損なわれていては適切な判断に支障がきたそう。会社が厳しい状況に見舞われたとき、家族問題が発生したとき、そして子育てにもこのユダヤの教えが有効ではないだろうか。
 
 
                             ライフスタイルアドバイザー 榊原節子

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