menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

健康

第6回 白骨温泉(長野県)ミルク色の「濁り湯」はもともと透明だった!?

高橋一喜の『これぞ!"本物の温泉"』

 ■温泉情緒をかきたてる乳白色の湯
 「濁り湯じゃないと温泉に入った気がしない」。先日、知人と温泉の話をしていたときに、飛び出したセリフだ。たしかに、乳白色や赤茶色、青色、緑色に濁った湯を見ると、温泉情緒をかきたてられる。「はるばる温泉に来てよかったなあ」と感じる瞬間である

onsen06_1.jpg

 

 濁り湯は見た目のインパクトが強いが、温泉成分が濃いケースも多い。温泉の中に含まれる成分が空気などに触れることによって化学反応が起き、色がつくのである。ということは、ほとんどの温泉は、湧き出した直後は透明である。時間が経つほどに濁りは深まっていくのだ(例外として、モール泉のように最初から色のついている湯もある)。

 そのことがよくわかる温泉が、長野県・北アルプスの南端、乗鞍岳の標高1400メートルの渓谷に湧く。「白骨温泉」は、開湯が鎌倉時代までさかのぼるという古湯で、江戸の元禄年間に湯治場として本格的に宿が建ちはじめた。現在では、十数軒の宿が温泉街を形成している。

 ■湯の美しさが温泉史に残る事件を引き起こした
 白骨温泉といえば、その名の由来となった乳白色の白濁湯が人気である。その色の美しさから、テレビや雑誌に頻繁に取り上げられ、温泉ファンの支持を集める温泉地となった。

 一方で、その湯の美しさが大事件を引き起こしたこともある。2004年、「白骨温泉公共野天風呂」に端を発した温泉偽装問題では、白骨温泉の象徴である白濁の湯を演出するために、共同浴場の野天風呂や温泉宿の一部が、草津温泉を原料にした入浴剤を投入していたことがあきらかになった。

 成分の変化によって温泉が白く濁らなくなったため、「このままでは入浴客にがっかりされてしまう」と思い込んでしまったのだろう。

 しかし、「透明湯より濁り湯のほうが価値がある」とは言いきれない。実際、透明な湯が酸化した結果が、濁り湯である。入浴感を大きく左右する「鮮度」という点では、濁りが濃い湯ほど劣る。

 ■濁る前の透明湯は新鮮な証拠
 白骨温泉の老舗旅館「泡の湯」は、70坪ほどの広さがある混浴露天風呂が人気だ。3本の打たせ湯が豪快に流れ落ちる湯船は、100%源泉かけ流し。白濁の温泉は硫黄の成分が強く、パンチのきいた湯が多いが、泡の湯はなめらかでやさしい。泉温もぬるめなので、ゆっくり長湯もできる。

 混浴は入りづらいという女性は多いと思うが、「泡の湯」は女性客が多いのが特徴。濁り湯なので、一度浸かってしまえば、人目をあまり気にしなくてすむということと、混浴の入口が女湯の浴室とつながっているため、湯船に入った状態で移動できるということがハードルを下げているようだ。

 そしてなにより、「こんなステキな湯船に入らないのはもったいない」と思わせるだけの魅力があるのだろう。

 混浴露天風呂に浸かったあとは、ぜひ露天風呂に併設された内湯に入ってもらいたい。総木造の2つの湯船には、白濁の湯と透明の湯がそれぞれ満たされている。実は、透明のほうが加温せずに、そのままかけ流しにされた鮮度の高い湯である。

 泡の湯の源泉は、もともと約37℃の透明のぬる湯で、加温されて酸化が進んだ結果、白く濁っているのである。透明の源泉に体を沈めると、たちまち気泡が付着する。新鮮な証拠である。露天風呂の湯よりも、強く温泉の個性を感じられると思う。

 たいていの人は混浴露天の白濁湯に目を奪われ、内湯の新鮮な透明湯をスルーしがちだが、それはあまりにもったいない。「温泉は濁り湯にかぎる」というのは誤った思い込みだと、文字どおり「肌で感じる」はずだ。

第5回 肘折温泉(山形県)朝市が立つ温泉地で「プチ湯治」のススメ前のページ

第7回 黄金崎不老ふ死温泉(青森県) 真っ赤な夕焼けに酔いしれる「海の絶景温泉」次のページ

関連記事

  1. 第91回 伊香保温泉(群馬県) 日本一マズい!? 歴史ある名湯「黄金の湯」

  2. 第129回 鳴子温泉(宮城県) 10の泉質のうち7つが湧き出す温泉天国

  3. 第41回 出湯温泉(新潟県) 二日酔いに効果あり!? 弘法大師が見守る寺湯

最新の経営コラム

  1. 第2回 心理的安全性が生む経営成果:意思決定スピードと市場対応力を高める方法

  2. 第1回 成長を加速する組織の条件とは? 経営者が今すぐ確認すべき10の質問

  3. AIの答えに埋もれないあなたらしさ──思いを伝える文章術5つのステップ

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 2025.04.04

    ピョートル・フェリクス・グジバチの『経営戦略の新常識』の連載がスタートしました!経営コラム「JMCAweb+」更新のお知らせ

  2. 2025.04.04

    【最新刊】平美都江氏「利益爆発の経営法則」音声講座(CD版・デジタル版)日本経済新聞4月4日朝刊 広告掲載のお知らせ

  3. 2025.04.01

    先月度 売れ筋人気ランキングの更新のお知らせ

  1. マネジメント

    第七十二話 「手を抜かない」 (伸興物産)
  2. 社員教育・営業

    第5講 クレーム対応の結果、会社のイメージを作るのは、品質・サービス・契約内容で...
  3. 人事・労務

    第35話 賃金制度の正しい運用がもたらす5つの変化
  4. キーワード

    第150回 ビットコイン
  5. ビジネス見聞録

    講師インタビュー《キーエンス流「付加価値経営」と生産性を高める法》田尻望氏
keyboard_arrow_up
menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ