2005年に日本道路公団の分割民営化に伴い設立された、東日本の高速道路を施設管理運営するNEXCO東日本(東日本高速道路)は、従来は休憩、トイレ、食事などのために「立ち寄る場所」だったパーキングエリア、サービスエリアを旅の途中の「目的地」にすべく、鉄道の駅の「駅ナカ」やデパ地下のような人気専門店を集積した「パサール」や、地域ならではの特徴をもった観光スポットとして楽しめる「ドラマチックエリア」などの新しい施設を増やしているが、2010年に関越自動車道上りの寄居パーキングエリアを、「星の王子さま」の世界観をコンセプトにしたテーマ型パーキングエリアに改装し話題となった。
ここはプロバンス瓦や塗り壁、テラコッタタイル、石積み壁を使用して、「星の王子さま」の作者サン=テグジュぺリが育った南仏プロバンス地方の雰囲気が味わえる建物に統一、レストランや売店でも「星の王子さま」関連商品などを販売、オープンから半月の売上が改修前の2倍強に伸びた。
■羽生パーキングエリア「鬼平江戸処」
NEXCO東日本はテーマ型パーキングエリアを、「3年おきくらいのペースで、自社が管轄する各路線に1つはあるようにしたい」としているが、昨年12月19日に第二弾となる「鬼平江戸処」を、東北自動車道上り線の羽生パーキングエリアにオープンさせた。
羽生は江戸時代に日光街道の要衝で、江戸の入り口となる「栗橋関所」(現在の埼玉県久喜市栗橋北)に近いことから、池波正太郎氏の小説でテレビドラマとしても人気が高かった「鬼平犯科帳」の世界を表現した町並みを再現、栗橋関所をイメージした門も作られている。
1745年生まれの鬼平(長谷川平蔵信以)が活躍した、江戸の町人文化が開花した文化文政時代(1804年~1829年)頃をイメージし、外観や内装を当時の面影を再現するため、壁や漆喰、雨樋などに経年劣化したようなエイジング(古く見せる)加工を施している。
中に入ると、鬼平が歩いたという本所深川界隈の下町を再現したフードコートに飲食店が並んでいるが、「鬼平犯科帳」の中で同心などが集まる「五鉄」は、モデルとされる1760年創業の軍鶏鍋専門店「玉ひで」が実際に出店しているし、そば屋「本所さなだや」、うなぎ屋「忠八」、中華そば屋「弁多津」(べんたつ)、江戸めし屋「万七」なども小説の中で登場した店名で軒を連ねている。
フードコート隣の「両国広小路」をイメージした土産物売り場も、歌川国郷が描いた浮世絵「東都名所両国繁栄川開之図」の世界観を元に再現している。
上りの羽生パーキングエリアは、都内に戻る人には「早く帰った方がいい」と通過しがちな場所だったが、「鬼平江戸処」が話題となり、年末年始(12/26~1/5)の来場者が1万8,000人と前年の1.8倍になっている。
テーマ型パーキングエリアは、通常の施設より開発コストにより回収まで17年ほどかかるため、長く愛されるものをテーマとするとのことだが、3年後にできる次のパーキングエリアも期待が持てそうだ。