■ストリーモ
日本経営合理化協会の国内視察ツアーで訪問した「ストリーモ(Striemo)」は、ホンダ発のベンチャー企業だ。
「ストリーモ」は1人乗り電動三輪(前1輪、後2輪)「マイクロモビリティ」(小型移動器具)で、独自のバランスアシスト機構により安定した走行が特徴だ。
安定して立ち止まるためには3点で接地することが必要で、乗り物との一体感が得られ、周囲を見渡せる視野を確保するには立ったままの運転が良いと、この形になった。
視察ツアーの参加メンバーは全員が実際に走行してみたが、90歳を越える参加者でも安定して走行でき、低速でもふらつきにくく、足をつくことなく停止できた。
現在抽選発売されている「S01JT」(300,000円)というモデルは、利用目的に合わせて最高速度を時速6km/h〜25km/hに設定でき、歩行者と一緒に歩道走行をするモードや、自転車程度のスピードで車道を走るモードなどを選ぶことができるので、車道を走っていて「危ないなと」感じたら低速モードに変更して、歩道をゆっくり走行することも可能だ。
また、2023年7月に道路交通法が改正され、最高速度が自転車と同程度であるなどの一定の要件を満たす電動キックボードなどは「特定小型原動機付自転車」として、運転免許がなくても走行できるようになったため、「ストリーモ」も運転免許は不要だ。
■浜野製作所が協力
「ストリーモ」は、ホンダ時代にバイクのロードレース「MotoGP」や、「パリ・ダカールラリー」などのレース用バイクの開発に携わった森CEOが自宅のガレージで試作品を開発し、ホンダの新規事業創出プログラム「IGNITION(イグニッション)」にエントリー、社内審査を経て2021年8月に正式に採択され起業した。
ホンダは「本田宗一郎のような人材を輩出する」という考えもあり、ベンチャー企業としての自立を促す方針のため、「ストリーモ」は試作開発協力を浜野製作所に仰いだ。
視察ツアーでも訪問した浜野製作所は、月額制のモノづくり支援拠点「Garage Sumida」を展開するなど、試作から設計、試作、量産までを支援するサービスを提供しており、これにより「ストリーモ」の開発スピードも急加速した。
2022年に最初の300台を抽選販売した時に、48時間で1,200件の申し込みが集まったが、応募者の半数以上を50〜70代のシニア層が占めていたため、走り出しや加減速での制御、安定性を高める細部の調整を急遽したという。
都市部では若者を中心に電動キックボードが増え始め、自転車同様に今後は事故や交通違反問題が注目されると思われるが、世界的バイクレースで培った技術を安全走行に生かした「ストリーモ」は、電動キックボードとは一線を画した新たなモビリティ文化を創造するものだと感じた。
======== DATA =========
●ストリーモ
https://striemo.com/
●ホンダ 新事業創出プログラム「IGNITION」発のベンチャー企業「ストリーモ」設立:
https://global.honda/jp/news/2022/c220613.html