社長が思い描く経営理念を社員に伝えられていますか?
盛田社長は自分が経営から退いた後も後継者が経営を継続してくれるかを不安に思い、賛多弁護士に相談に訪れました。
盛田社長:以前お話しました通り、私には息子がおりますが、後継者を親族に限定することはしないつもりです。私の希望は、ただ今の会社を継続して社員を守っていってほしいということなんです。その観点から考えた時に後継者が会社をちゃんと経営してくれるのかが不安なのです。
賛多弁護士:なるほど。多くの経営者の方が同じような悩みを抱えていらっしゃいます。私はその方々に伺うのは、社長が考えていらっしゃることを十分に後継者候補は当然、社員全員と共有していますか、いいかえれば、社長が思い描く経営理念を社員に伝えてきましたかということです。
盛田社長:私の思いは何かしらの集まりがあるときや日々の会話でも伝えてきたつもりです。おそらく全員は無理でも70%ぐらいの社員には伝わっているのではないかと思います。
賛多弁護士:私はこれまで経営理念が社員に浸透しているかという趣旨のいくつかの調査結果を見てきましたが30%台~40%台という結果が多いように思います。
盛田社長:一般的にはその程度なんですね。でも、うちの会社はもっとみんな理解してくれていると思いますよ。
賛多弁護士:ちなみに経営者に対して「社員が経営理念を理解していると思いますか」という質問の回答と社員に対して「あなたは会社の経営理念を理解していますか」という質問をした場合、経営者に対して質問した場合の方が20%から30%程度、社員に対する質問した場合の回答より高いという調査もあります。つまり、一般的に社長が思っているほど社員は経営理念を理解していないということです。
盛田社長:そうなんですか。当社の経営理念を「顧客満足第一」としてきました。でも、経営理念はそもそもそんなに大事なものなのでしょうか。あらためて言わなくても当然わかっているものではないのでしょうか。
賛多弁護士:盛田社長は、先ほど「会社を継続して社員を守っていってほしい」とおっしゃいましたが、それはどのようなことを意味するのでしょうか。
盛田社長:まず、お得意先のお役に立ち、その信頼関係を維持しながら、必要に応じて社会の流れにも柔軟に対応して、新しいことを始め、会社が継続していくこと、それによって社員が守られる、私はそう思っています。そのような経営を後継者にして欲しいということです。
賛多弁護士:今おっしゃったことが御社の経営理念「顧客満足第一」の意味と考えてよいですか。
盛田社長:はい、そうです。
賛多弁護士:社員の方々との日々の会話で今のような説明を十分にされていますか。
盛田社長:意識的に話すことはあまりないです。それは当然、わかっていると思いますので。
賛多弁護士:それでは、会社に戻られたら、社員の方々に聞いてみてください。御社の経営理念が何であり、どんな意味があるのか、そして経営理念と社員の普段の仕事がどう関係しているのかを。
盛田社長:わかりました。聞いてみます。
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