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採用・法律

第75回 『有期雇用従業者は育児休業取得できるの?!』

中小企業の新たな法律リスク

都内で飲食店を経営する山本社長が、ある従業員の件で賛多弁護士に相談に来られました。山本社長によると、その従業員は、妊娠・出産を控えているとのことですが…。
* * *
山本社長:先生、今日は、従業員のことでちょっと相談がありまして。

賛多弁護士:どうされましたか?

山本社長:最近、あるアルバイトの女性従業員が妊娠しており、5月に出産予定であることを申し出てきました。この従業員は、入社して間もないのですが、出産後に育児休業の取得を認めなくてはならないのでしょうか。最近、育児・介護休業法が改正されたと聞いていたので、気になりまして…。

賛多弁護士:社長、それはおめでたい話ですね。ところで、その従業員は、無期雇用ですか、それとも有期雇用ですか。

山本社長:この従業員は有期雇用です。たしか、有期雇用の従業員は、入社1年未満であれば、育児休業を取得できないと思っていたのですが‥…。

賛多弁護士:まさに、その点が今回の育児・介護休業法の改正のポイントの1つになりました。これまでは、有期雇用の従業員の育児休業の取得には「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」という要件がありましたが、これが廃止されました。

山本社長:そうしますと、この従業員には、育児休業を取得させなければならないということでしょうか。

賛多弁護士:必ずしもそういう訳ではありません。ちなみに、入社時期、契約の期間、更新の有無も教えてもらえますか。

山本社長:入社は2022年1月で、1年契約の有期社員です。ただ、働きぶりがよいので、来年も更新の予定で、本人にもその旨は告げていました。

賛多弁護士:なるほど、更新の予定があるのですね。有期雇用の従業員が育児休業を取得するには、「子が1歳6か月に達する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない」という要件があります。その従業員に労働契約の更新の予定があったとすれば、子が1歳6か月に達する日までに労働契約が満了していないこととなりますので、この要件も満たしそうですね。

山本社長:そうなんですか。そうしますと、やはり、この従業員には、育児休業を取得させなければならないということでしょうか。

賛多弁護士:あとは、労使協定が締結されているかどうかだと思われます。御社では、育児休業の対象者に関し、労使協定を締結していますか。

山本社長:そういう労使協定は結んでいないような気がするのですが…、ちょっとよく分からないので確認してみます。労使協定の締結は、この従業員の育児休業の取得と関係があるのですか。

賛多弁護士:、労使協定を締結して、事業主に引き続き雇用された期間が1年未満である労働者(無期契約及び有期契約の双方の従業員)を育児休業の対象から除外することは可能です。もし、御社がこのような労使協定を締結していれば、まだ入社して1年に満たないこの従業員は育児休業を取得できないということとなります。

山本社長:よく分かりました。ところで、改正された育児・介護休業法は、いつから施行されるのですか。

賛多弁護士:今回の育児・介護休業法の改正事項は多岐にわたり、改正事項によって施行時期は異なります。このうち、今お話しした、有期雇用従業員の取得要件の緩和に関する改正事項は、本年(2022年)4月より施行となります。

山本社長:そうなんですか。知りませんでした!改正法の全部を覚えるのは大変そうですので、とりあえず、有期雇用従業員の取得要件の改正の他に、本年4月施行の改正事項があれば教えてください。

賛多弁護士:法改正により、①育児休業の申出・取得を円滑にするための雇用環境の整備に関する措置、②妊娠・出産(本人または配偶者)の申出をした労働者に対して事業主から個別の制度周知及び休業の取得意向の確認のための措置を講ずることが、事業主に義務付けられました。これらも、本年4月より施行となります。

山本社長:ありがとうございました。

賛多弁護士:さらに、改正事項のうち、10月施行の事項もあります。こちらも重要な改正ですので、また時期が来たらお話しさせてくださいね。

* * *

昨年、出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるようにすることを目的として、育児・介護休業法が改正されました。いくつかの改正項目がありますが、そのうち、本年4月より施行される改正事項は以下のとおりです。

1.有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
こちらは、山本社長と賛多弁護士の会話にもでてきました。
法改正前は、有期雇用労働者が育児・介護休業を取得するには、①引き続き雇用された期間が1年以上、②子が1歳6か月に達する日までにその労働契約が満了することが明らかでない(育児休業の場合)、②介護休業開始予定日から93日経過後6か月を経過する日までに労働契約が満了することが明らかでない(介護休業の場合)、という要件がありました。法改正により、このうち、①の要件が削除されました。
ただし、労使協定を締結することにより、引き続き雇用された期間が1年未満の労働者を、育児・介護休業の対象から除外することができます。

2.育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け
(1) 育児休業を取得しやすい雇用環境整備
育児休業の申出・取得を円滑にするための雇用環境の整備に関する措置を講じることが事業主に義務付けられました。雇用環境の整備に関する措置として、①研修の実施、②相談窓口の設置、③事例の収集・提供、④制度と育児休業取得促進に関する方針の周知、のいずれかは講じなければなりません。
(2) 妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け
妊娠・出産(本人または配偶者)の申出をした労働者に対して、事業主から個別の制度周知及び休業の取得意向の確認のための措置を講ずることが事業主に義務付けられました。周知の方法としては、面談(オンラインでも可)、書面の交付、FAX、電子メール等のいずれの方法でもよいとされております。また、個別の周知・意向の確認については、育児休業の取得を控えさせるような形での周知及び意向確認は認められません。

執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 渡邉宏毅

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