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採用・法律

第29回 『生前贈与の方がお得って本当??』

中小企業の新たな法律リスク

 息子1人と娘1人を持つ山形社長は、社長仲間から聞いた噂の真偽を確かめに、賛多弁護士の事務所にやってきました。
 
* * *
 
山形社長:社長仲間から、生前贈与がお得だという話を聞いたのですが、本当でしょうか??「贈与税は相続税の補完税」と聞いたことがあるので、生前贈与をしても相続をしても税負担は変わらないと思っているのですが。
 
賛多弁護士:「贈与税は相続税の補完税」と言われていることをご存知とは、さすが山形社長ですね。
 
山形社長:生前に財産を全て相続人に贈与し、相続税の負担を回避する事態が起こらないよう、生前の贈与には贈与税が課されるのですよね。
 
賛多弁護士:おっしゃる通りです。ただし、相続税の税率が贈与税の税率より高い場合は、生前贈与をした方が税負担は少なくて済むのですよ。
 
山形社長:それはどういうことですか。
 
賛多弁護士:例えば、山形社長のように、配偶者は既にお亡くなりになっていて、法定相続人はお子様の2人だけというご家庭で考えてみましょう。相続財産は、仮に4億円とします。
      
山形社長:この場合、子ども2人が納めるべき相続税はいくらになりますか。
 
賛多弁護士:話を単純にするために、差し引けるのは「3000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除だけだとしますと、2人が納めるべき相続税は、計1億920万円という計算になります。数式で示しますと、[{4億円-(3000万円+600万円×2人)(基礎控除)}×1/2(法定相続分)×40%(税率)-1700万円(控除額)]×2人、です。
 
山形社長:ふむふむ。それで、生前贈与をすると、どれくらい税負担が少なくなるのですか。
 
賛多弁護士:仮に、お子様方に、それぞれ1000万円ずつを生前贈与していたとします。贈与税の税額は、一人あたり、基礎控除110万円を引いた890万円×30%(特例税率)-90万円(控除額)の177万円で、計354万円になります。この場合、2000万円減った相続財産3億8000万円にかかる相続税額は、1億120万円となります。すなわち、贈与前の相続税額より、800万円の節税になることになります。
 
山形社長:へー、驚きました。贈与税の負担を差し引いても、446万円の節税になるんですね。
     
賛多弁護士:この場合、相続財産4億円を持つ方の1000万円にかかる相続税率は、45%に達しています。その分が減るので、税率が30%の生前贈与を行っても結果的に税負担は少なくて済むことになるのですよ。
 
山形社長:なるほど。ということは、社長仲間の話は本当だったのですね。
 
賛多弁護士:山形社長のように相続財産をたくさんお持ちの方は、生前贈与を有効に活用して、税負担を少なく済ませることが考えられますね。もっとも、相続税の対象となる被相続人の割合は、令和元年12月発表の国税庁の資料 でも、8.5%(およそ11.5人に1人)ですので、相続税の対象とならない被相続人が生前贈与をしても、税負担は減るどころか、増えてしまいますね。
 
山形社長:それはそうですよね、いつでも生前贈与がお得とは限らないのですね。
 
賛多弁護士:生前贈与にも様々な非課税制度がありますし、相続税の控除にも様々なものがあります。相続税と比較しながら生前贈与をされる場合には、どうぞ専門家にご相談ください。
 
山形社長:ありがとうございます。ぜひお願いします。
 
* * *
 
 生前贈与の非課税制度として、主なものに①暦年課税の制度、②相続時精算課税制度、③夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除の特例、④直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税の特例、⑤直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税の特例、⑥直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税の特例、があります。
 
 そもそも、教育資金などは、扶養義務者(両親、祖父母など)が必要な都度、贈与する場合は非課税となります 。
 このように生前贈与には様々な非課税制度がありますので、相続税対策の選択肢の一つとして、活用を検討されてみてはいかがでしょうか。
 
ーーーーーーーーーーーーーーー
 「平成30年分 相続税の申告事績の概要」(令和元年12月、国税庁)
  「No.4405?贈与税がかからない場合」(国税庁 タックスアンサー)
 
 
 
執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 木元 有香

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