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ビジネス見聞録

後継社長のコミュニケーションQ&A 第3回「先代との息はピッタリ。でも社内に危機感が足りない…」

ビジネス見聞録 経営ニュース

質問

 創業110年の製造業。4代目が継いだばかりです。会長70代と社長40代、非常に息もぴったりで経営の腕も抜群です。しかし、あまりに良い空気感と安定した事業のせいで、社内には危機感が全くありません。幹部以下、社員の士気の緩みがひどい状況です。

 会長と社長は誰よりも朝早く出社して今後の経営会議を行い、緊張感を持って日々の経営にあたっているのですが、現在の幹部陣も社長の年上ばかりで、なかなか「自分の部下」になってくれていない。

 社内に危機感をもたせて、社員にメリハリのある仕事をさせたい。幹部には、次の時代をつくるための人財に育ってほしい。そのためには、どんな言葉をかけたらよいでしょうか。また、行動を変える必要があれば、なにかアドバイスをください。

 

回答

ビジネスモデルが強ければ強いほど陥りがちな「平和ボケ」状態をどうするか

 製造業として100年以上続いている例ということで、このような場合に多くみられるのはビジネスモデルがこの100年間でほとんど変化していないケースです。

 しかも、業績がある程度安定していて会長と社長の中が良いとなると、どうしても社内の雰囲気は危機感の薄い平和ボケ状態になってしまいます。

 そのような中で会長や社長が頑張れば頑張るほど、社内の雰囲気はますます対極に流れます。「社長と会長が頑張っているし、業績も悪くないし、まあ今のままでいいよね。」という状態ですね。

 ここでお伝えしたいことが、グループ・ダイナミクス(集団力学)の働きです。

 グループは常にバランスを取ろうとしていて、グループ内のある勢力が保守的になると、別のある勢力はその対極の革新的に必ずなります。このことを理解せず会長と社長がもっと頑張りもっと仲良くしてしまうと、その対極で幹部以下の社員は会長と社長に依存してしまうようになってしまいます。

 このような時に導入してほしいのが2つ。『客観的な評価制度』『勇気づけのコミュニケーション』です。大前提としては、社長が子どもの頃から可愛がってもらっている役員や幹部を自分の部下として下に従わせようとしないことです。

 

『客観的な評価制度』と『勇気づけのコミュニケーション』でメリハリのあるヨコの関係をつくる

 『客観的な評価制度』から説明します。

 製造業なら、例えば「技術」や「知識」や「人材育成」など業績を挙げるために必要な項目で、ここまでクリアできればこの役職に昇進、逆にクリアできなければ降格などの評価基準を明確に定めることです。もし今明確に定まっていなかったとしても暗黙知では存在していると思いますので、それを明文化することが最初の段階としては大切ですね。

 その上で『勇気づけのコミュニケーション』を取り入れるとよいでしょう。

 特に社長が子どもの頃から可愛がってくれている役員や幹部に対しては「会社の評価制度で決まったから従うように」と上から話すのではなく、「評価制度で決まってしまったので、何とか評価されるように俺も一緒に考えて行きたいから一緒に頑張ろう」と同じヨコの関係でコミュニケーションを取ることが大切です。

 具体的には、教材『社員を活かす「対話の魔法」』でお伝えしているコミュニケーションの枠組み・ライフイノベーションマップを使い、役員や幹部を対象に入社から今までの話を聞きましょう。単に話を聞くだけでなく、深掘りして「本当は何を大切にしているのか」という価値観を引き出すのが重要です。

 おそらく話を聞く中で、「あの時は会社(会長、社長)のために頑張った」エピソードが出てきます。その時「何を大切にしていたからそんなに頑張れたのか」や「何を大切にして会社で働いているのか」という価値観を引き出してあげましょう。

 会社のためという感情の奥にある価値観を引き出して承認し、その価値観を満たすために一緒に向かっていく。そんな関係性を築いていきましょう。役員や幹部を何とかしようとするのでなく、共に評価制度に立ち向かっていく関係性をつくるということです。

 

「会長の力」は効果的に借りるのが吉

 一方で、会長の代から会社に努めてくれている役員や幹部からすると、どうしても社長は子どもに見えてしまいます。だから社長から評価制度の話をされると、社長がどれだけヨコの関係で関わろうとしてもいい気がしないかもしれません。

 このような場合は、会長を引き合いに出すとうまくいきやすいでしょう。つまり、役員や幹部がもともと従っていた会長(当時の社長)を引き合いに出し、「会長もこの新しい評価制度を進めたいと言われています」とするのです。

 このように評価制度に立ち向かって協力する関係性をつくることで、役員や幹部自身も危機感を感じ、昇進の評価基準も明確になり若手もやる気が湧いてくる様に変わるのです。

 

講師:平本あきお(ひらもとあきお)
株式会社平本式 代表取締役。社長より社長の心を理解し“社長が本来やりたかった経営”を引き出すメンタルトレーナー、コミュニケーション心理学の専門家。どんな状態の企業でも、指導後には空気を一変させ、社員のやる気を最大限に引き出すその手法は「平本マジック」と呼ばれる。日本人では数少ない「米国アドラー大学院修士号」取得者。トップアスリートや有名俳優、上場企業経営者、産業、教育、政治、芸能など各界のリーダーや起業家も指導。講演、雑誌連載、TV出演や著書等も多数。

平本あきおの「後継社長のコミュニケーションQ&A」
第1回「うまくいく後継者の対話の手順《5ステップ》」
第2回「創業120年の飲食業、三人の兄弟喧嘩」
第3回「先代との息はピッタリ。でも社内に危機感が足りない…」

 

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