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- 第159回 『上司を「教師」にしよう』
作家の吉川英治氏は、
《吾以外皆我師(われいがいみなわがし)》
という言葉を座右の銘にしていたという。
昔の徒弟制度にも、学ぶところはある。
新入りが、兄弟子や師匠の技を見ては、
それを「盗んで」自分のものにしていった点だ。
欧米でも同じである。
コック修行は、皿洗いから始める。
皿を洗う前に、皿に残ったソースをひとなめするためだ。
こして、ソースの味を覚えていく。
「コックになりたいんだ。皿洗いなんかしちゃいられない!」
と息巻くようでは、
せっかくのチャンスを棒にふるだけだ。
上司との付合いにも、この目線が必要になる。
上司は、自分が進もうとしている道を、
曲がりなりにも先んじているいる存在だ。つまり、
格好の「道しるべ」だと思えばよい。
仕事ができ、人間的にも尊敬できる立派な上司なら文句はない。
だが、いつもそうとは限らない。
「なぜ、こんな人が上司?」
と思うような上司にあたることも多いだろう。
そんな時は、反面教師にすればよいのである。
「自分はああはなるまい」という、《間違いの手本》にするのだ。
不思議なもので、反面教師にしようと思ってダメ上司を観察していると、
なぜか、その人の意外な良いところを見出すことが多い。
結局は、《吾以外皆我師》である。
学ぶ姿勢さえあれば、人は、誰からでも何かを盗みとり、
自分のものにしていくことができる。
ダメ上司は腹の中で軽蔑する? あからさまに敬遠する?
・・・いずれも、青すぎる。