作家の吉川英治氏は、
《吾以外皆我師(われいがいみなわがし)》
という言葉を座右の銘にしていたという。
昔の徒弟制度にも、学ぶところはある。
新入りが、兄弟子や師匠の技を見ては、
それを「盗んで」自分のものにしていった点だ。
欧米でも同じである。
コック修行は、皿洗いから始める。
皿を洗う前に、皿に残ったソースをひとなめするためだ。
こして、ソースの味を覚えていく。
「コックになりたいんだ。皿洗いなんかしちゃいられない!」
と息巻くようでは、
せっかくのチャンスを棒にふるだけだ。
上司との付合いにも、この目線が必要になる。
上司は、自分が進もうとしている道を、
曲がりなりにも先んじているいる存在だ。つまり、
格好の「道しるべ」だと思えばよい。
仕事ができ、人間的にも尊敬できる立派な上司なら文句はない。
だが、いつもそうとは限らない。
「なぜ、こんな人が上司?」
と思うような上司にあたることも多いだろう。
そんな時は、反面教師にすればよいのである。
「自分はああはなるまい」という、《間違いの手本》にするのだ。
不思議なもので、反面教師にしようと思ってダメ上司を観察していると、
なぜか、その人の意外な良いところを見出すことが多い。
結局は、《吾以外皆我師》である。
学ぶ姿勢さえあれば、人は、誰からでも何かを盗みとり、
自分のものにしていくことができる。
ダメ上司は腹の中で軽蔑する? あからさまに敬遠する?
・・・いずれも、青すぎる。