コロナ禍以降、「融資時に個人保証をしました。」という例が、中小企業では増えていると実感しています。しかし今や、個人保証をする時代ではありません。平成26年(2014年)より、金融庁による「経営者保証に関するガイドライン」の運用が始まりました。
経営者が融資への個人保証をしていると、会社が経営破綻に陥った際に、その借金返済は経営者が負うことになります。仮に数億円だったとしても、個人で返済できる金額ではありません。その結果、家や資産を手放し、家族は離散し、行き詰まった結果、自殺者が増えた、とされているのです。銀行も、個人で返済できる額でないことを知りながら、平気で個人保証を要求するのです。
そこで金融庁が銀行に対して、“経営者個人の保証に頼る融資をしてはならない!”としたのが、経営者保証ガイドラインの目的なのです。新たな融資だけでなく、既存の融資についても、個人保証を外してもらうことができるのです。
そのガイドライン運用から7年を経過しました。しかし未だに、銀行は平気で個人保証を要求します。それも、最近まで銀行融資に無縁だったものの、コロナ禍で久しぶりに融資を受けた、という会社ほど、個人保証を受けているのです。
久しぶりに融資を受けた経営者の多くは、個人保証に関するガイドラインの存在を知らないのです。融資時に個人保証するのは当たり前、という、過去の思い込みがあるのです。
銀行も自ら、「今は個人保証はいらない時代ですよ。」とは絶対に言いません。とれるものならとる、というのが銀行のスタンスです。結局、融資を取り巻く今の環境・状況について、経営者自身が知識を得ていなければ、銀行から言われるがままに対応してしまうのです。
現状の個人保証を外すにはまず、「経営者保証に関するガイドライン」を銀行の担当にみせて、「このガイドラインに沿って個人保証を外してください。」と銀行担当に申し入れることです。すると概ね、「わかりました。いったん持ち帰って検討させていただきます。」となります。
で、何の返事もないまま、時間だけが過ぎてゆきます。特に催促をしなければ、そのままになります。結局、銀行担当者は、せっかく獲得した個人保証を失いたくないのです。検討するもなにも、そのような要望があったことさえ、その担当者の上司に伝わっていない可能性が高いのです。
まず、2週間たってなんの返事もなければ、銀行担当者はそのままスルーしようと思っている、と考えてよいです。そこで、「個人保証を外す件はどうなりましたか?」と担当者を詰めてゆきます。
すると今度は、「今、本部にも確認していますので、もうしばらくお待ちください。」となります。ほぼ、ウソです。そこでようやく、このままではまずい、スルーできない、と悟り、担当者は動き始めます。個人保証解除の要望を支店長に伝え、相談するのです。そうして支店長なり、別の上司が動き始めると、ようやく、個人保証解除に向かって動き始めます。
つまり、一度言ってみたけどダメだった、で済ませてはいけない、ということです。粘り強く、繰り返し、「個人保証を外す件はどうなったのか?」と、2度3度、銀行担当に詰め寄っていった会社が、個人保証を外すことに成功しているのです。
「それでも銀行が個人保証を外さない時は、どうすればいいですか?」となることがあります。その際は、「財務局に聞いてみる」と言ってください。財務局は、金融庁の下部組織です。銀行は財務局を恐れているのです。
財務局に聞いてみる、と言えば、銀行員は、「そ、それは待ってください!もう一度、本部で検討しますので!」となり、個人保証がようやく外れた、ということが、何度もありました。それほど、銀行は財務局を恐れいているのです。
「財務局へ聞いてみる」は、銀行交渉において、困ったときの切り札なのです。交渉をしても銀行が個人保証を外さない、というのなら、この切り札を、使ってみてほしいのです。個人保証が外れれば、経営者は誰にも言えない重荷から解放されます。中小企業を経営する皆様には、精神的に身軽になり、これからの経営に邁進してほしいのです。