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戦略・戦術

第115話 ミスリードたるK氏著『99%の社長が知らない銀行金融』を切る!

強い会社を築く ビジネス・クリニック

 先日、この人の新刊書を手に入れて読んだのであるが、全くのミスリード続きの文章を読むにつけて、社会経験のない若い経営者が読むと、とんでもない間違いを犯す……と心配になって筆をとりました。
また、別のA氏なる人物は、25年前よりハイパーインフレがくる、国債は紙くずになると言っている人物もいますが、この二人は同じ類の経営コンサルタントではないかなと思います。(間違っている事を平気で出版する)

この書籍と私の主張とが全く異なる点は、銀行はビジネスのパートナーという考えのもとで、銀行のご機嫌を損なわないように、常に行動するという点です。
一方、私 井上 和弘は、銀行(借入金)だけがビジネスパートナーではなく、原材料を仕入れる取引業者(買掛金・未払金)もパートナーであり、銀行は大切なお金を仕入れる業者の1つであるという考え方です。貸す方も借りる方もその立つ位置は5分と5分であると思うのですが……。
借入金の多い会社には いざという時は 絶対に貸してくれません。冷たいのです。


K氏は、このような事を書かれています。
「無借金経営はするな!無借金だといざという時に潰れる」  ???
えーと思ってしまいました。
多額の借金をしてみなさい。いざという時でも毎月返済と支払金利の支払いは難しいです。財務内容の良い無借金会社は銀行から見れば安全なので、足しげくその会社に通ってくれます(毎月、銀行口座の出入りを見ていますから…)


「金利は高くとも借りられるだけ借りろ!」
これまた無茶苦茶です。金利が高いのは信用がないから、財務諸表が悪いから高いのです。
借りられるだけかりろ!返済が苦しくなるだけです。今や銀行は、歩積両立はしてはならないのですよ。負債比率が高く、実質金利率はいったい何%になると考えるのでしょうか?


「銀行口座には 月商の3か月分を持つと安心」
平穏な経済状態の時、こんなことをしていればのんびりとした経理になり、緊張感がなくなるものです。借金があって3か月分も現金を持つのは経理の怠慢を生じます。
私は、月商の半分が預金にあれば十分、資金繰り業務をしっかりできるのが管理マンの技量です。財務諸表も銀行からみればよい会社の評価を得ることが出来ますし、マサカの時は当座貸越の枠を設定しておけば安心です。


「銀行からのノルマ達成のお願いは極力聞いてあげること」
金融取引に「情実」は絶対に入りません。支店長以下2~3年で必ず転勤です。協力したことなど引き継ぎされませんし、新・旧支店長引き継ぎの時にここの社長は甘い!と引き継がれるだけです。
仕入業者の人からノルマ達成のために在庫積増しのお願いを極力,聞いてあげる甘い経営者が存在するでしょうか?
金の貸し借りで銀行に情は通じません。金を貸してくれるのは貸せる状況があるからで、貸せないのは貸せる状況にないからです。


「自己資本比率が低くてもキャッシュフローがいい会社にはお金を貸す」
K氏は、全く、財務知識、金融知識に対して無知ですよね。銀行員が言うところのキャッシュフローは何なのでしょうか?
銀行口座に現金が多く積まれている事なのでしょうか?
銀行員がすべて知っている知識のキャッシュフローとは
CF = 営業利益高 + 減価償却費 を言います。
一番、銀行員が重要視する経営指標は借入金償還年数です。

有利子負債総額

キャッシュフロー


有利負債(長短借入高)を何年で返せるか?です。

“自己資本比率が低い”とは、有利子負債が多いという事で、キャッシュフロー(分母)が多くとも、借金が多い会社(自己資本が少ない)には、銀行からみればお金を出したくないのです。

今日、残念ですが、銀行の支店長の権限は非常に狭まっています。
決済! ( 本店 ⇔ 支店長 ) 本店には支店長の決裁に対応する人間がいるとK氏は思っているのですね。本店の決済はコンピューターです。コンピューターがたたきだした点数による判断が融資の可否の80%を占めます。


後の20%は各店の提出資料によるところです。
支店長に権限があったのは30年前の話です。私が嘘をついていると思われるなら支店長にお聞きになればわかるはずです。(ただし、現役の支店長に聞いても正直に言ってくれるかどうか)…OBがいいと思いますよ。


「手形借入をすると期日までに手形を落とさねばならず、待ったがきかない」
これも「町の嘘がひとり歩き」をしていますね。
手形借入の手形を何と称しますか?単名手形というのです。
取引に使われる商業手形は複名手形というのです。ビジネスコンサルタントの常識です。
商業手形は手形交換所を通り、預金残がないと不渡手形となり、銀行取引停止となり、倒産という烙印を押されます。
銀行相手に出す単名手形は、交換所は通りません。困るのは実はその銀行です。
担当の行員が飛んできて、善後策を考えるだけです。
手形貸付は支店長の少ない権限の1つで簡単なので、すぐ貸す方も借りる方もこの安易な方法を取ります。
ぐるぐるまわして気が付けば長期借入期みたいになり、額も多くなっており自己破産しなければならないような借入金地獄に入り込みます。

ともかくK氏は、体験・経験的な20年前の古い銀行との付き合い論であって、業種、社歴的に普遍的な銀行取引の基本では、到底ない、通用しない話を述べておられます。
経験浅き経営者相手に述べればミスリードすること甚だしいものがあり、私は、身震いするほど恐ろしく感じるのです。

第114話 千載一遇のチャンス 即時償却制度前のページ

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