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社員教育・営業

第10号 “新規事業を行いたい会社”の全員営業の活用法【実践編】

社長のための“全員営業”

 新規事業を行いたい会社は、守りから入って攻めへと移れ

 前回(第9回)コラムの問題提起として、新規事業に注力すれば既存事業がおろそかになり、一方、既存事業の合間でやる程度では、新規事業は成り立たないという話をしました。

 第10回コラムでは、どうすれば、そのような状況下において、しかも現有戦力のままで、新規事業の立ち上げに成功できるか、そのポイントと始めの一歩についてお伝えします。
 
 新規事業において、会議室で話し合われる段階の算出や計画段階はともかく、それを実際に現場で動かすには、しかも、限られた経営資源・現有戦力で、かつ既存事業の営業力とサービス品質も落とさずに実施しようとする、一筋縄ではいきません。
 
 仮に、既存事業の延長線上であっても、300人規模までの中小企業が数億~10億単位の新規事業で成功をおさめるのは、新しく別会社を立ち上げるくらいの工夫とエネルギーが必要となります。
 
 しかし、過去、数多くの新規事業のコンサルティングを依頼された際、自社なりにやっては見たが上手くいかなかった新規事業の状況を確認・分析すると、年度計画で1つ目標を追加するかの如くで進めようとするのを散見したものです。
 
 とはいっても、実際に新しい別会社を立ち上げる訳ではありません。要は、既存事業の営業力を落とさず、新規事業を同時に推進しようとすると、中小企業特有の過去~現在までの「人に仕事が張り付いている状況」のテコ入れなしには両立できないという意味です。
 
 この点では、全員営業の5つのノウハウのうち、3番目の「人に頼るな、仕組みで儲けろ」が重要なポイントとなります。
 
 人に仕事がはりついているからこそ、既存事業をやりつつ、新規事業をやろうとすると、心情的・時間的・成果的により優先度の高い既存事業に、現場がひきづられるのです。
 
 この解決を現有戦力だけで行おうとするならば、営業部門単体では、いままで以上にがんばるしかないので、根本的には解決しません。
 
 既存事業の営業活動を分解して、他部門で完全に肩代わりできる領域を見つけるか、通常業務の範疇であれば支援できる仕組み作りが必要になるからです。その体制と準備が整ってこそ、営業部門は既存事業における営業力と心情面の不安を持つことなく、新規事業へ注力することが可能となります。
 
 しかし、このような全社に関わる経営戦略上の意思決定ができ、実際に会社の各部門間の利害調整をしつつ、協力・理解を得ようとすると、経営者の中でも代表権を持つ社長が音頭をとらないと到底できません。
 
 くどいようですが、普通に現場に任せると、新規事業より既存事業が優先されます。ゆえに、新規事業の推進にはやる気持ちを抑えてでも、まずは、既存事業のテコ入れや生産性をあげるところから手をつけないといけないのです。
 
 それは、料理の手順にも似ています。何をどう料理するかだけでなく、その順番によっても、出来上がる味が変わるのです。
 
 あたかも、料理を作る際、水を入れた鍋に火をかける前から具材を入れるのか、沸騰してから具材を入れるかで味が変わってくることや、刺身を切る時に包丁をいれる場所や角度といったことでさえも微妙に味は変化するかの如くです。
 
 特に、今回のように同時に両面作戦を実施する時や、会社で新しい施策を実施する時は、この順番の重要度が増してきます。
 
 会社がいま存在しているのは、過去~現在取引しているお客様のおかげであるというのは、誰しも納得できる話です。しかも、自分の給料がどこから発生しているかをたどれば、会社の部門や職種に関係なく、現在取引しているお客様のおかげということも理解できます。
 
 ゆえに、会社が新規事業の内容とその動きを、すべての社員が理解できるよう吟味して説明すれば、その重要度が伝わり、営業部門以外の他部門であっても、こと既存事業の範囲内であれば、本業の仕事の負担が増えない仕組みと体制を整えておけば、営業面の支援を得ることは可能になります。
 
 例えば、ある企業で指導したものを上げれば、
 
  ・再注文であれば経理部が管理する・・・
  ・商品部が既存顧客フォローの一部を担う・・・
 
 といったことの発案および検討、その実現に向けた他部門との合意支援や具体的な仕組作りなどが上げられます。
 
 そのような支援と仕組み作りによって、既存事業における営業力の維持が担保できたことで、難易度が高い新規事業に、本来関わるべき営業部門のエースが携わることができた会社も存在しています。仮に、そこまではいかなくとも、繁忙期でも、新規事業の動きが途絶えることはなくなります。
 
 いや、そんな悠長に段階を踏んでなどいられない、さっさと新規事業を立ち上げたいんだと仰しゃるならば、経営陣と管理職は、何日かは土日をつぶしてでも、集まって施策を検討し、具体案を考えて、短期間に集中して素早く仕組み作りを整えればいいだけの話です。また、そういった動き自体が、会社がこの新規事業に本気だということを全社員に示すことにもつながります。
 
 新規事業(攻め)の成否については、競争相手との比較が影響してくるため、実際にやってみないとわからない部分がどうやっても生じてきます。しかし、既存事業(守り)の強化については、会社内で対策を練れば、確実に今よりも強化することができるのです。
 
 〝新規事業を行いたい会社“が、現有戦力のままで、両面作戦を同時に展開しようとするならば、まず既存事業(守り)を固めてから、新規事業(攻め)に移ることによってのみ、既存事業の営業力を落とすことなく、新規事業にも専任できる体制を整えることが可能となるのです。これこそが、最も新規事業の実現性を高くするとともに、経営リスクを最小限に抑える方策なのです。
 
 
 ・今回のポイント(〆の一言)
 全員営業により、既存事業を会社全体で支援してこそ、社長が思い描く新規事業との両面展開が、現有戦力のままでも可能となる。
 

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