■個人商店の集まりの人業から、組織活動の事業への進化には、2つの仕組みが不可欠
第3回コラムでは、特定の人員に頼る会社から、組織としての競争力を持つ会社へ進化するために、2つの問題提起をしました。
組織の規模が大きくなるにつれ、社長の能力向上のみならず、1日24時間という自然の摂理への限界突破をどう考えるかの重要性と、組織を構築する際の注意点についてです。
第4回コラムでは、その2つに対処しつつ会社経営で実践するためのヒントをお伝えします。
さて、次のうち、いずれの選択が、良い組織を作るでしょうか?
1.社員も増えてきたことだし、そろそろ階層と役職者がいるかな
2.新しい部門を新設するから、役職者を決めないといけないな
3.あいつも随分、長く会社にいるから何か役職でもつけるか
答えをいえば、明らかな間違いは、「3」であり、一定条件と会社の方向付けによって正解と間違いのいずれにも振れるのが、「1」と「2」です。
第3回コラムで、30人以上だと組織が必要だから、「1」は正解じゃないのか?と疑問を持たれた方がいらっしゃるかもしれませんが、私の質問には、“良い組織を作るため”にと書いています。
では、「2」は言いますと、実際の中小企業の経営では、社内にふさわしい人がいないから、社長または役員が兼務で新部門をスタートさせたが、意思決定が早く却って良かったという場合も多々あります。
実務上は、会社の規模が30人以上になってくると、社長だけでは、全員に細かな指示・指導を行うことが難しくなるのは事実ですが、かといって、誰かを組織の責任者として、役職者に任命するだけでは、社長が思い描くように会社が組織として機能しないのは、私がいうまでもなく、実感されていらっしゃることかと存じます。
A.現場のことを一番よく知っている人を、組織の長につけたはずなのに・・・
B.能力も人柄も、任せて大丈夫と考えたのだが、なぜ上手くいかないんだ・・・
こういう悩みが生じたときは、誰を責任者にして、どんな役職にするかとは別で、事前に整えておく必要条件が漏れているのが原因です。
それを解く鍵は、組織という文字に潜んでいます
組織という字は、いずれも糸偏(イトヘン)です。
糸は、太ければ強くなるのでそれで充分というのが、さきほどあげたAとBの考え方です。しかし、着物の帯やクモの巣をイメージしていただけると判りやすいのですが、太い糸がありさえすれば、丈夫な帯や巣がつくれるでしょうか?。いや、そもそも、帯や巣にすらなりません。
糸は、縦軸と横軸があってこそ、強靭かつ用途として機能し、立体化できるのです。素質ある人を採用し、育てる仕組みがあり、優秀者を昇進させるだけでは、会社が組織として上手く機能できないのはそのためです。
では、会社を、個人商店の集まりの人業から、組織活動の事業への進化させる縦糸と横糸とは何かというと、「縦糸は役割」であり「横糸は連結」です。
「君が一番、営業現場のことを知っているから、部長として頼む」という話の前に、部長というのは、どんな役割を会社において担い、それを行うために、どの程度の裁量があるかが縦糸です。そして、各部門間で仕事を受け渡す時の決まりごとや意思情報の疎通をどうするかというのが横糸です。
今までもやっている仕事だから、大丈夫だろうということで、現場の忙しさにひきづられて、その辺りを整えないまま大きくなった会社ほど、あとで苦労します。
しかも、だましだましで紡いだ縦糸と横糸が、自然に強固になることはありません。各部門間の現場実務の連結という横糸は、まだしも、会社全体における役割や裁量範囲という縦糸を、現場の責任者が勝手に決めるなどできないからです。
最初から完璧なものを作る必要はありませんし、かといって、ありきたりな業務分掌や役割権限では意味をなしません。なぜなら、社長が望んでいるのは、自らが思い描いた活動・成果を実現するための事業組織だからです。
次回第5回からは、全員営業を導入する際、最も大きく影響を受ける要因の会社が置かれている状況の違いによる活用法を、3回シリーズでお伝えします。
【今回のポイント(〆の一言)】
組織を構成する文字は、2つとも糸偏(イトヘン)である。「縦糸の役割」と「横糸の連結」、いずれが欠けても、その組織では不都合が生じる。