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第30回
2013年は《日本・スペイン交流400周年》
~慶長遣欧使節の冒険心と行動力を取り戻そう!~

次の売れ筋をつかむ術

2013年は、日本・スペイン交流400周年に当たる。

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実は両国交流のきっかけを作ったのは伊達政宗だった。
 
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   (左)伊達政宗  (右)徳川家康

徳川家康による江戸幕府開府から10年目の1613(慶長18)年、
仙台藩主の伊達政宗が家康の許可を得て、
エスパーニャ帝国(スペイン)の国王フェリペ3世およびローマ教皇パウルス5世に、
支倉常長(はせくらつねなが)を中心とする約180人の慶長遣欧使節を派遣したことに由来するのだ。
 
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 (左から) フィリッペ三世、パウルス五世、支倉常長2点 
 
政宗は、仙台藩領内で、スペイン人宣教師、セバスティアン・ビスカイノの協力を得て、
当時の世界最高水準のガレオン船(大型木造帆船)、サン・ファン・バウティスタ号(洗礼者ヨハネの意味)を建造した。
 
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スペインは、1588年に、無敵艦隊がオランダとイギリスの連合軍に破れ、没落の一途をたどっていた。
 
同国は、それでもなお、17世紀前半、世界最大の植民地帝国だった。
ガレオン船の建造技術は国家最高機密で、この技術を外国に漏洩した者を死刑に処するほど大切なものだった。
 
スペイン人宣教師、ルイス・ソテロを外交使節の正使に、家臣、支倉常長を副使に任命し、
1613年10月28日、バウティスタ号は牡鹿半島の月ノ浦(宮城県石巻市)を出帆した。

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太平洋を渡り、ヌエバ・エスパーニャ(新スペイン=現メキシコ)のアカプルコ、
キューバのハバナを経て大西洋を渡り、スペインのセビリアに到着。
 
3年余りの欧州滞在後、当時のスペイン領フィリピン経由で帰国するまで7年がかりの壮大な旅を敢行した。
 
日本とスペインの交流は、この慶長遣欧使節の派遣に始まり、2013年で記念すべき400周年を迎えたのだ。
 
◆スペインへの使節団派遣は400年前の震災復興事業だった!?
 
しかし、政宗は超巨額の費用がかかるスペインへの使節団派遣を行なったのだろうか?
 
派遣の理由については諸説あり、現在でも謎だ。
 
奇しくも東日本大震災から400年前に当たる派遣の2年前、慶長三陸地震が起こり、大津波によって死者数千人が出た。

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そこで伊達藩を震災から復興するために、当時世界最大の強国だったエスパーニャとの交易を目指したと言われる。
また政宗は、ひいてはエスパーニャとの軍事同盟を締結し、倒幕を企んでいたという説もある。
 
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康に続いて戦国時代の最後に登場した伊達政宗は、「次は自分の番だ」と
ひそかに天下取りを狙っていたかも知れない。
 
しかし、関ヶ原の合戦の後、策士家康は様々な手を打ち、仙台藩をはじめ各藩の力を徐々に削ぎ落とし、
徳川幕藩体制が固まって行った。政宗は2代将軍、徳川秀忠の後見役としてしか出る幕はなかった。
 
幕府がキリスト教の中でも新教国のイギリスやオランダと親交を深めていることに対抗し、
旧教国のスペイン、そしてローマ法王に接触して交易を行ない、同盟関係を築くことから、
状況の打開を図ろうとしたというのだ。
 
しかし、バウティスタ号の建造に際しては徳川幕府から派遣された大工も参加し、
使節団自体が幕府公認であり、団員の中には幕府の役人も含まれていた。
 
つまり、幕府が後ろ盾となり、仙台藩を代理人に旧教国ともパイプを作ろうとしたという説もある。
幕府自体がスペインの優れた造船技術と航海術を学ぶために派遣したという説だ。
 
また、当時の日本は銀を豊富に産出し、貿易品の中心が銀であったが、精錬の技術が低く無駄が多かった。
そこで、西洋で発達していたアマルガム法という水銀を使った効率の良い精錬方法を学ぼうとしたとも言われる。
 
まさに歴史ミステリーだが、慶長遣欧使節がスペインやローマの地を踏み、日本に帰還したことは確かな史実である。
 
◆スペインに日本使節団の子孫たちがいた!?
 
日本・スペイン交流400年を迎え、現在、スペインに暮らすサムライの子孫だと主張する人達に
注目が集まっている。
 
使節団一行は、月の浦を出発して3ヶ月後にメキシコの太平洋岸のアカプルコに到着した。
その後、約100日かけてメキシコを陸路で横断。
そして、大西洋側のメキシコ湾に面したベラクルスからスペインめざして出航。
 
1614年10月25日、イベリア半島南部のグアダルキビール川の河口の町、サンルーカルに到着した。
 
グアダルキビール川を上り、コリア・デル・リオというセビリアから南に15キロの町に上陸する。
ここで、セビリアへ入る前に4日間滞在した。
また、2年後にローマから戻ってからもこの町に9ヶ月滞在している。
中にはこの地にとどまったサムライたちもいたと言われる。
 
スペイン語で日本はJAPON(ハポン)というが、
このスペイン南部の現在のアンダルシア州の人口3万人弱のコリア・デル・リオという町に、
約800人のハポンという姓を持つ人たちが暮らしているのだ。
 
この地に残った日本人は、やがて、現地に溶け込み、スペイン人と結婚して子孫を設けた。
この過程で日本の苗字は地元の人にとっては発音しにくく書きにくかったため、
わかりやすいように日本人は、皆、ハポン姓を名乗るようになったと言われる。
 
使節団の縁により、仙台市から1992年に支倉常長像が、この町に贈られている。

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今も彼らは使節団がこの地に残り住み着いた子孫だと信じている。
4世紀の時を経て、それを証明すべく、現在、国立遺伝学研究所などによるDNA鑑定が進められている。
 
 
◆日本・スペイン両国で往時の人たちの冒険心と行動力を取り戻そう!
 
実は、日本とスペインの関係は、慶長遣欧使節団より以前から始まっている。
 
使節団に先立つこと64年。今から464年前。
スペインのバスク地方出身のイエズス会宣教師、フランシスコ・ザビエルが、
 
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インドのゴア、中国の広東省を経て、九州の薩摩半島南端の坊津(ぼうのつ)に到着。
その後、1549年8月15日、現在の鹿児島市の祇園之洲町(ぎおんのすちょう)に上陸した。
 
両国は北半球のほぼ反対側に位置するが、互いの歴史と文化に影響を与え合って来た。
 
情熱の国スペインと言って、まず思い浮かぶものは、パエリア、フラメンコ、闘牛だろう。

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カタロニア地方にある世界一のレストラン「エルブジ」(エルブリ)をはじめとする
スペイン料理に目がないグルメも多い。

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スペインは、画家のパブロ・ピカソや

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建築家のアントニオ・ガウディらを輩出した芸術の国としても知られる。

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ガウディが設計を担当したサグラダ・ファミリアは建設開始から約130年が経過しても今なお未完のままだが、
年間300万人近くが来場する一大観光地だ。福岡県出身の外尾悦郎氏が主任彫刻家を務めている。

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若い世代ではサッカーに違いない。

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大学でスペイン語を選択する学生の大半がサッカーをきっかけにスペイン語に興味を持つ。
 
スペイン語は、中国語に続いて世界で2番目に母国語としている人が多い言語だ。
母国語以外でコミュニケーションに使う言語としても、英語に続いて世界第2位。
 
また、スペイン語が母語の人、スペイン語を母語に次いで第2言語とする人、スペイン語の学習者を加えた総数は、
約5億人もいる。
 
スペインは、フランス、アメリカと並んで、年間5,000万人を超える外国人旅行者数を誇る。
日本からも年間30万人以上が訪れている。
 
2012年現在の世界遺産も、47のイタリア、43の中国に次いで、42で世界で3番目の数だ。
ちなみに、アメリカは21で10位。日本は16で14位である。
 
世界屈指の観光国スペインだが、ユーロ危機以降、失業率は20%台に達し、経済危機が続いている。
 
そんな中、2013年~2014年、慶長遣欧使節団派遣400周年を記念した、
日本におけるスペイン年、スペインにおける日本年を迎えた。

幸いにも、支倉常長らが持ち帰ったローマ市公民権証書など日本の国宝47点に加え、
常長がフェリペ3世に宛てた書状などスペイン側の資料94点など日本・スペインの交流の歴史が、
6月18日、ユネスコの世界記憶遺産に登録された。
 
400年前と同じく宮城県をはじめ東北を中心に大震災に見舞われた日本とユーロ危機に揺れるスペインの両国が、
往時の人たちの冒険心と行動力を取り戻し、復興を目指す船出の年としたい。
 
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