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新技術・商品

第60回 使い方を決めるのは消費者

北村森の「今月のヒット商品」

 消費者はなぜ、その商品を買うのか。目的はもう、人の数だけあるといえるかもしれません。

 

 別の表現をすれば、「それを購入して何に使いたいのか」という理由が多彩なものほど、ヒットの可能性は高いともいえますね。

 

 今回取り上げたいのは、ソースネクストの「オートメモ S」です。名刺サイズのデジタル機器で、値段は1万9800円。基本的にはボイスレコーダーなのですが、AI(人工知能)の力を使って、録音した音声を自動でテキスト化してくれるのがミソ。テキストデータは、任意の転送先(メール、あるいはDropboxなどのクラウドサービス)に飛ばしてくれます。

 これがその本体です。同社は2020年に、初代の「オートメモ」を発表。それが、音声をテキスト化できるボイスレコーダーとして2021年にシェアトップを獲得しています。ただし、この初代機は本体に液晶画面を備えておらず、操作はスマートフォンのアプリと連携させるという形をとっていました。

 

 今回の「オートメモ S」は本体に液晶画面をつけていて、スマホアプリに頼らず、これ一台で操作が完結します。そこがポイントです。

 

 こう聞くと、ガジェットを知る人ならば、ちょっと疑問を抱くかもしれませんね。音声を取り込んでテキスト化する、という機能を得たければ、わざわざ2万円ほど出さなくても、無料で提供されているスマホアプリがいくつも存在します。私も最初はそのことが気になった。

 

 でも、実際に使い比べてみたら、やっぱり専用機は強かった。「オートメモ S」が無料のスマホアプリより優れていた点は複数ありました。

 

 まず、音声の録りっぱぐれがまずない。無料アプリを使ったことのある人なら経験があるでしょうけれど、途中で録音が途切れていたりして困ることがありますよね。「オートメモ S」では、(私はけっこう長く使っていますが)そういう事態を防げます。

 

 次に、操作系が明快であることが挙げられます。本体側面のスイッチを入れたのち、前面にあるボタンを押せば録音スタート。で、あらかじめ設定しておいたWi-Fi環境下に入ると、自動でテキスト化され、それがメールなりクラウドサービスなりに転送されます。この一連の流れにストレスがないし、なにより音声を録りたいシーンですぐに開始できるのは、使用を繰り返すと大きな強みであると実感できます。

 

 さらに、これが最も重要かと思うのですが、テキスト化の精度が無料アプリよりも明らかに高い。いくらAIを活用しても、なんだかヘンテコな日本語がテキストで上がってくるケースが。こうした類のサービスでは多い印象がありました。「オートメモ S」はかなりいい線をいっています。

 

 なぜか。私の推測ですが、専用機であることの意味がここで生きているのではないでしょうか。テキスト化にあたってはAIの能力だけがカギではありません。それ以前に音声をいかに拾うかが大事になります。となると、 ハードウエアの仕様が厳しく問われますね。おそらく同社の通訳機「ポケトーク」の技術が本モデルに応用されているはず。 つまり、A Iを生かすにはハードの力も大切になるわけです。

 この「オートメモ S」ですが、皆さんなら何に使いますか。まあ、普通に考えれば、会議の議事録づくりでしょうね。別途有料になりますが、かなりの長時間の音声録音時でも自動テキスト化対応するプランが用意されていますから。

 

 確かに、議事録づくりで面倒なテキスト起こしをラクにしてくれる、というのが、この商品を求めるユーザー層には多いと想像します。でも…。

 

 用途はまだ別にもあるんです。私の先輩であるベストセラー作家は、朝の散歩にこの一台を携えていくそうです。で、いいプロットやフレーズが頭に浮かんだら、すぐさまスイッチを入れて、音声でそれを残す。散歩から自宅に戻ると、その音声がテキスト化された状態でクラウドサービスに転送されている。アイデアが浮かんだ場面で慌ててメモをとったり、スマホを取り出してアプリを立ち上げたり、という手間がなくなり、ずいぶんとラクになったと聞きました。

 

 ああ、なるほど…。私もこの「オートメモ S」を、いまは似たような形で使っています。ふとした場面で大事なことがパッと想起されることもありますし、街歩きするなかで「あっ、これは次の原稿に生かせそう」というヒントが得られる場面もあります。そうした瞬間にこの一台を使うと、かなりストレスが減ります。その意味でいいますと、この商品は経営者層にも向くのではと思いますね。絶えず頭を働かせている人が多いでしょうから。

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