皆さん、あけましておめでとうございます。
2023年最初の原稿ですので、今年のトレンドを賑わせそうな製品やサービスをいくつかお伝えしましょう。まず、大手企業の商品では…。
私はトヨタ自動車「クラウン」の動向に注目しています。昨年、すでにクロスオーバーというタイプは発売されていて、あとはスポーツ、セダン、エステートが今年登場する見通しです。クラウンがどこまでの反響を呼ぶのか、おそらく自動車業界以外の企業も気になっているのではないかと私は思います。なぜか。
ロングセラー商品にとって悩ましいのは「なにを変えて、なにを変えないか」の峻別です。あまりに変えては持ち味を損なうし、かといって変えないままではなにも起きません。クラウンは思い切って変化を遂げたようですが、その一方で変えなかった部分もあります(セダンの存続がそうですね)。この一台が消費者にどのように受け止められるか、そこからの学べる点は多いはずです。
次に、VRヘッドセットの動向も注視していきたいところです。昨年はメタバースという言葉が社会を賑わせました。単なるオンラインの仮想空間ではなくて、他者とのコミュニケーションを深化させた世界がメタバースではないかと思います。実在しない空間に自分が入り込んで、そこで生活できる感覚を得られるかどうか、ここが重要になる。
ごく自然な形で買い物したり他の人と会話したり、あるいは旅までもが仮想体験できるサービスが今後増えれば、こうした空間に没入できるヘッドセットのニーズが高まるでしょう。魅力あるサービスが広がるかも含めて引き続きチェックしていきたい領域です。
地方に目を転じてみましょう。今年も話題豊富です。北海道の北広島市には今春、「北海道ボールパークFビレッジ」がオープン。野球の試合を楽しめるだけでなく、宿泊施設や飲食施設も揃っており、試合のない日にも観光客を呼び込みそうです。
九州では、年内にもホバークラフトが久々に就航。大分空港と市街地を25分で結びます。2009年にいったんは廃止となっていた航路ですが、それが復活するという話。就航すれば、定期航路としてはアジア唯一となりますから、乗り物マニアがこぞって乗りに訪れるという現象も生まれるかもしれません。
地方といえば、「店舗型ふるさと納税」の進展にも期待がかかります。これは、ネットなどを通してふるさと納税の仕組みを利用するのではなく、現地まで行った折に、店舗型ふるさと納税を実施している拠点に立ち寄って、お金を支払って商品購入する代わりに、その場で納税をするというもの。これならば、その地域に出向くわけですから、地域応援という色彩はより濃く打ち出せますね。そこが大きいと思います。
例えば、京都の京丹波町は、昨年秋、特産の栗を使って、全国で初めて農園での店舗型ふるさと納税をスタート。またたく間に100万円を超える反応がありました。今年もさらに各地で新たな事例が登場するはずです。
ここ数年注目されているキーワードとしてはSDGsがありますね。地方からの動きでも、面白い取り組みがさらに増えてきそうです。
昨年後半、すでに現れた事例でいいますと…。徳島県の上勝町にあるクラフトビール醸造所の「RISE&WIN」が完全循環型クラフトビールを発売しています。ビールの生産時に生まれたモルトかすを使ってわずか24時間で堆肥をつくり、その堆肥で麦を育て、その麦でビールをつくり、さらにその際に出たモルトかすを…という流れです。その第一号は限定発売ながら売れ行き好調と聞いています。
理念ばかりが先行するのではなくて、こうした「わかりやすい、商品購入を通して応援しやすいSDGs」の実践は、ここからますます大事になってくるでしょう。どんな製品やサービスが世に出てくるか、2023年はこれまでにもまして注目したい。人々の共感を得るには、こうした「わかりやすさ」が重要だからです。
コロナ禍はまだまだ予断を許さない状況ですが、それでも今年は、より力強い商品が多くの消費者を振り向かせるだろうと期待しましょう。