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マネジメント

第129回 『頼る』

社長の右腕をつくる 人と組織を動かす

 
以前、ある地方都市に講演で行ったときのこと。
 
250人ほどの聴衆に、「人生や仕事には、目標設定が大切だ」
というような話をしたのだが、
講演後、30歳前後のAさんが私の控室を訪ねてきて、
「ご相談があります」と、緊張を隠せない顔でいう。
 
話しを聞くと、Aさんには大きな夢があるという。
水球のプールをつくることだ。
 
Aさんは地方公務員としての仕事のかたわら、水球のコーチとして、
若手の育成や指導に当たっている。
 
だが、彼の地元には水球の設備を完備したプールが無い。そこで、将来は、
自力で水球のプールをつくり、水球愛好家を増やしたいのだという。
 
「相当のお金がかかるでしょう?」
と尋ねると、Aさんは、

「介護事業を立ち上げ、お金をつくりたいと思っています。
 私のこうした考え方について、どうお考えでしょうか?」
とまっすぐな視線を私に向けた。
 
私はこのような青年の出現に大いに喜び、一方では、落胆していた。
 
好きな水球の普及のために、私財を投じて水球プールをつくりたいという
目標をもつところまでは大いによい。
だが、その先が、あまりにも漠然としている。
 
介護事業と口にしたが、その知識や経験はない。
少子高齢化時代が進むから、老人事業や介護事業などがよいのではないか
と思っているにすぎないと見受けられた。

 
だが、こうして、講師を務めた私のところに飛び込んでくる勇気は大いに買いたい。
人は誰でも、頼りにされると嬉しいものなのだ。
 
私はAさんに、
「具体的なビジネスプランを来月末までに立てて、送ってくださいよ。
 それを見て、できるだけ相談にのりましょう」
と約束をしてしまった。
 
一面識もなかったにもかかわらず、アドバイスをしたくなったのである。
今、そのプランの到着を、楽しみに待っているところだ。
 
 
この例だけではない。多くの部下に接してきた経験からいえば、
上司は、勝手にコトを進める部下より、
なにかと相談をもちかけてくる部下の方に、どうしても情が移ってしまうものだ。
 
頼られて嬉しくない上司・先輩はいない、と覚えておこう。
 

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