皆さん、あけましておめでとうございます。2025年の幕があけました。
今年もますます地方が熱い1年になるのでは、と私は期待しています。たとえば…。
まず、「mibot(ミボット)」。広島のKGモーターズが今年量産スタートさせる、1人乗りの超小型EV(電気自動車)です。ワンボックスで可愛くもあり、先進的なスタイリングともいえるボディ形状。昨夏の予約受付から1か月で1000台突破という受注数を記録しています。昨年時点での予約価格は100万円と、かなり思い切った設定という点でも脚光を浴びました。
興味深いのは、開発したKGモーターズが、このmibotを「小型モビリティロボット」と表現しているところです。無線通信によって、車載のソフトウエアをどんどんアップデートする仕組みを前面に打ち出しています。言ってみれば、スマートフォンのような感覚のモビリティでもあるわけです。
こうした超小型コミューターは、過去にも大手メーカーからベンチャー企業までいくつも発表されてきましたが、大ブレイクまでには至っていません。そこにはいくつかの原因がありそうですが、このmibotの場合、車両本体の超小型化に留まらない楽しさを創出している点が特筆すべき部分でしょう。個人的には、ベンチャー企業発ですでに大ヒットとなっている電動車椅子「WHILL」のような存在になってゆけば面白いと考えます。どちらも「人が移動する自由を確保するための意欲作」という点が共通しています。
このほか、全国各地からの動きで言えば、九州の「大分第一ホーバークラフト」が今年、大分空港と大分市街を直接結ぶ航路をスタート予定。ホーバークラフトの定期運行便の国内就航は2009年以来です。また、昨年に世界遺産登録となった新潟の佐渡島の人気上昇は今年、本番を迎えるはずです。地域航空会社のトキエアが成田空港と新潟空港、さらには成田から佐渡空港に直行する便の就航を目指していると聞きます。
こうして、全国それぞれに注目すべきトピックがふんだんな2025年ですが、ここからは別のことをお伝えさせてください。ヒット商品というテーマからは離れてしまいますが、今年も忘れてはいけないと私が強く感じている、あの地域をめぐる話です。
能登半島地震から1年が経過しました。私、昨年何度も現地を訪れましたが、昨年末の段階でも、まだ復旧の途上という印象を受けました。
そうしたなか、石川県立看護大学の教員と学生による取り組みに、私は昨年から注目し続けてきました。同大学の垣花渉教授は、「被災地にいちばん近い大学だから」と、震災後まもない時期から、被災地のひとつである穴水町で毎月、地元で暮らす人たちの身体と心のケアに力を注いでいます。
今回、掲載している画像はいずれも、昨年12月のクリスマスパーティの様子です。午前の早い時間帯から地元公民館に150人近くもの人が集まり、午前中は折り紙を使ったクリスマスリースづくり、お昼はボランティアスタッフの手づくりによるランチ、そして午後は、影絵と歌のステージ、と盛りだくさんの内容でした。
当日のパーティでは垣花教授は裏方に回っていて、全体の運営を取り仕切っているのは同大学の学生たちをはじめとするボランティアスタッフでした。
そのひとりに話を聞くと、昨年2月ごろ、その学生の出身地である穴水町が大変な状況となっていることに心を痛め、指導教員である垣花教授に「私の出身地を救ってください」と相談したそうです。それがきっかけとなり、垣花教授がすぐさま動き、毎月こうして被災者の身体と心のケアのために、学生たちとともにこの町に足を運んでいるのだといいます。
垣花教授の言葉が印象的でした。「こうしたサポートこそが、研究者、大学人の務めじゃないか」。
取り組みのきっかけをつくった学生は、こうも語っていました。「ひとりでは、ここまでのことはできませんでした」。
そうですね、ひとりで始められることがちゃんとあり(この学生が垣花教授に思い切って相談しようと動いたように)、そしてまた、ひとりだけではできないこともあるわけです。
これは、被災者のケア、被災地の支援についてもそうですし、地域から何かを始めるにあたっても同じことが言えると私は思います。「ひとりで確実に始められること、ひとりだけではできないこと」その両者をそれぞれ意識するのが肝要ですね。
この2025年も、私は引き続き被災地を訪れ、微力であってもできることを続け、また同時に、全国各地でのさまざまな奮闘事例についても、しっかりと取材してまいりたいと思っています。