ウェルビーイング経営の重要性
企業経営において「ウェルビーイング経営」が注目を浴びています。このウェルビーイング経営の概念は、単なる経済的成功だけでなく、企業が社会的責任を果たし、従業員の幸福度を向上させ、顧客や社会の幸せをも目指す姿勢が求められるという新たな価値観を反映しています。SDGsも浸透し、循環型社会への転換が進む現代において、もはや、自分の会社だけが利益を独占すればよいという時代は終わりを告げたと言っていいでしょう。では、ウェルビーイング経営の時代に求められる組織力とはいったい何なのでしょうか。ここで、カギになるのは「多様性」です。
多様性の尊重とD&I
ウェルビーイング経営では、業績向上だけでなく、個々の従業員が持つ多様な経験や背景を尊重し、組織の価値に包含することが求められます。これが、ダイバーシティ&インクルージョンの実現です。従業員の多様な背景を重んじ、包含(インクルージョン)することで、職場全体のエンゲージメントが向上し、創造性や生産性の向上に繋がるとされています。
コーポレートガバナンスの変革
ところで、2021年6月、東京証券取引所がコーポレートガバナンス・コードを改訂し、その主要なポイントとして「経営戦略に照らして取締役会が備えるべきスキル(知識・経験・能力)と、各取締役のスキルとの対応関係の公表」が挙げられました。これは、企業が持続的に成長するために、経営陣に多様なスキルと経験が必要であり、その多様性が企業の経営戦略や存在意義に適合しているかに注目すべきだという意味を持っています。
多様性に関する研究成果
経営陣の多様性としては、性的な多様性も重要です。この点、取締役会に女性がいる企業の成長率は、役会に女性がいない企業に比べて有意に高いというデータがあります(クレディ・スイス世界の2400社対象のリサーチ https://www.credit-suisse.com/about-us-news/en/articles/media-releases/42035-201207.html)。
また、多様性が求められるのは、経営陣だけではありません。各チームの中でも多様な個性が花開くことで、イノベーションが進み、組織が持続的に発展することもさまざまな研究で明らかになってきました。例えば、ロンドン スクール オブ エコノミクスのマックス ネイサン氏らによる研究では、人種的多様性が高い企業は、より起業家精神に富み、イノベーションの観点でも高いパフォーマンスを発揮することが報告されています。https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1111/ecge.12016