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第182回 フランス・リヨン・パリ視察ツアーレポート3

社長のメシの種 4.0

■世界最大のスタートアップ拠点「Station F」


 日本経営合理化協会のリヨン・パリ視察ツアーで訪問したパリ13区に位置する「Station F」は、世界最大のスタートアップ拠点だ。
 『F」は「France」「Future」「Founders(起業家たち)」を意味し、元鉄道の貨物倉庫だった建物を、通信企業Freeの創業者グザヴィエ・ニール氏が個人資産2億5,000万ユーロ(370億円)を投じて再開発した、34,000平方メートルの巨大施設だ。

 


 この施設は単なるレンタルオフィスではなく、Meta(Facebook)、LVMH、Microsoft、INSEADといった大手企業や、教育機関が独自のアクセラレータープログラムを施設内で運営するなど、大企業、スタートアップ、教育機関、投資家、行政など、起業に必要なすべてが物理的に同じ空間である「ひとつ屋根の下」にあり、「イノベーションは空間とエコシステムが育てる」としている。

 


 フランス政府は近年「スタートアップ・ネイション構想」を掲げ、税制優遇やビザの簡素化、研究開発支援などを積極的に打ち出しているが、Station Fはそうした国家戦略と民間のビジョンが合流した成果だ。
 現在1000社を超えるスタートアップが入居しているが、月額わずか195ユーロ(3万円)から、常設デスクと24時間アクセスが提供され、ハードウェア製造向けのファブスペース、イベントホール、ラウンジ、カフェテリア(イタリアンレストラン「La Felicità」)なども備わっている。


 さらに、入居企業の半数以上は非フランス籍で、日常的なコミュニケーションも英語が基本という「世界を目指す人々のための拠点」となっている。
 多様なスタートアップが並び合い、互いにフィードバックを与え合い、時にはピボット(方向転換)を即決するなど再挑戦を恐れない文化があり、「競争」より「共創」への強い価値観のシフトが感じられた。


 また、社会課題やサステナビリティにも強い関心を持っており、AIやIoT、脱炭素、教育改革、移民問題など、フランスの文脈に即したテーマを「ビジネスの種」として扱う姿勢がある。
 日本でもスタートアップ支援やオープンイノベーションが叫ばれているが、それを「機能」させるためには、このように人・技術・資本・知見が物理的に交差する空間づくりが必要なのではないかと思った。


■「Station F」出身企業


 「Station F」出身スタートアップには、第178回、180回でも紹介している「Mistral AI」もいる。
 「Mistral AI」は「Station F」の「AI & Data」関連プログラムを活用し、フランスがAI主権を確立する上での象徴的存在となっている。


 ヨーロッパですでに数百の病院に導入されている、放射線画像(X線、CTスキャンなど)をAIで解析する医療用診断支援ソフトウェアを開発の「Gleamer」も、「Station F」の「AI & HealthTech」分野の成功例だ。
 また、誰でもスマホで使える「共有型スマート自転車ロック」を提供する「Sharelock」というスタートアップは、自転車を持つ個人が自らのロックを「貸し出し」可能にし、利用者は近くのロックを見つけて施錠・開錠ができるという、新しい都市インフラを提案している。


 今回のフランス視察を通して米シリコンバレーだけでなく、フランスやヨーロッパもAIなどのスタートアップ企業を育てるエコシステムが存在することを実感した。

======== DATA =========

●Station F
https://stationf.co

●Mistral AI
https://mistral.ai

●Gleamer
https://www.gleamer.ai

●Sharelock
https://www.sharelock.co

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