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人事・労務

第43話 潮目が変わった!賃金戦略に対する企業スタンス

賃金決定の定石

 

 

 今年の春季労使交渉について、これまでに公表された妥結結果を見てみると、最大の焦点である賃上げ率も採用初任給の金額も、前年以上に大幅に上昇していることが分かります。

 

 連合の調査(6月5日現在)によれば、平均賃上げ方式による賃上げ率は全体で5.08%(昨年3.66%)、300人未満の中小組合に限ってみても4.45%(同3.36%)と大幅な上昇を記録しています。昨年の賃上げも29年ぶりに3%超となる大幅な上げ幅を記録しましたが、今年はそれをさらに上回る水準です。

 

 採用初任給(連合調査、6月5日)も、春季労使交渉では、高卒189,001円(事務技術:前年比10,693円増)、大卒229,032円(事務技術:同12,481円増)と、近年にない大幅な上昇を記録しています。すべての学歴にわたって、採用初任給相場が急騰しているのです。

 

 実質賃金が2年以上にわたりプラス転化できないという状況の下、賃上げを通じた人材の獲得と流出防止へ向けて、大半の企業が賃金戦略を大きく転換しました。“防衛的な賃上げ”と言われるように、業績回復が未だ十分でない中小企業でさえ賃上げを通じた人材確保を優先しようとする動きが広がっています。

 

 このように賃金決定の世界では、いまパラダイムシフトが起こっています。

 

 時代の転換点にあって、「とりあえず今は10,000円引き上げておこう」というような場当たり的な対症療法では、賃金問題の抜本的な解決はできません。先進国の中では低額な日本の最低賃金が、これから1,500円(月額ベースで25万円超)を目指そうという動きの中では、先を見据えた戦略的かつ計画的な対応が不可欠です。

 

 前提となるのが、合理的な賃金制度の確立と正しい運用です。
 安定雇用をベースにした正社員の賃金制度には、将来に不安を抱かせることのない、社員にとっても分かりやすいオープンな仕組みが望まれます。社員が定着し、その実力を遺憾なく発揮するにも、賃金処遇が将来にわたって納得できるものでなければならないのです。

 

 賃金管理研究所が提唱する責任等級制賃金制度では、給与決定の第一要素を「仕事」に置き、職制上の期待役割(責任の重さ、難易度など)を基準として等級区分を設けています。将来が見通せてベアにも柔軟に対応できる賃金表、実力差を反映する定期昇給ルール、貢献度に応じた賞与配分、それらを実現するための納得性ある評価制度。仕事重視の賃金制度のもと、こうした基本スキームを確立して正しい運用を継続し、企業と社員の成長・発展に繋げていくことが、今日のような変化の局面ではますます重要になっているといって良いでしょう。

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