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税務・会計

第54号 BS「格言」 其の三

会社を守り抜くための緊急対策

其の三

バランスシートがすべてを支配している

 

 景気の良し悪しは、世間一般的にはGDP(国内総生産)や会社の売上などで判断していることは周知の事実です。このため、新聞等で大企業が過去最高の売上を計上しているから景気がいいと報じることがよくありますが、多くの人はピンと来ていないようです。
 いくら売上が過去最高といわれても景気がいいと実感しないどころか、不安でいっぱいと感じているのです。
 この理由を一言でいいますと、国、地方公共団体、大企業、中小企業、そして個人のバランスシートが悪いからです。
 つまり、悲劇のバランスシートを背負っているのです。
 経営や生活の基盤となりますバランスシートの状態が良くないため、それが将来への不安感につながっていきます。
 これでは、消費や設備投資も減退し、景気が悪くなってしまうのも仕方がありません。

 バランスシートというものは、一度、悪くなりますとなかなか元には戻りません。原因を断ち切らないとますます悪くなっていくという性格を持っています。
 私はこれまで、経営者として自分自身の会社のバランスシート、公認会計士として上場会社や上場準備中の会社、そして中小企業のバランスシートを数多く見てきました。
 また、証券会社において、投資銀行業務や株式公開業務を行った際、投資先等のバランスシートも見てきました。
 売上が増加し、利益もしっかり計上しているにも関わらず、悲劇のバランスシートのため、資金が不足し、経営が安定しない会社が本当に多いのです。
 逆に、損失が続いているにも関わらず、魔法のバランスシートを持っていたため蘇る会社もあります。
 事業を継続させることはとても大変です。だからこそ、魔法のバランスシートを手に入れていただきたいと切に願います。

 ところで、上場会社の株価は、PBV(プライス・ブック・バリュー/株価純資産倍率)という算式によって、PBVが0.5倍から2.5倍であれば、適正な株価水準だと判断します。
 3倍を超えると割高になると判断しますので、いずれ株価は下落するだろうと考えます。PBVの算式は、株価を1株当たりの純資産で除したものです。
 このことは、株価がバランスシートで決まることを意味しています。

 現行の企業会計は、株式などの金融商品について時価会計というものを採用しています。
 例えば、株式を購入し、購入した金額(これを原価といいます)より時価が下落すれば、たとえ売却をしなくても、下落分を損失として計上します。逆に、原価より時価が上昇すれば、上昇分を利益として計上しています。
 もし仮に、資産の大半が株式などの有価証券だとすれば、株価の下落で、資産が大幅に減少し、純資産(自己資本や財産ともいいます)が大幅に減少します。
 株式市場の騰落で、バランスシートが悲劇になり、魔法にもなり、安定しません。

 実は、銀行や生命保険などの金融機関のバランスシートがこのようなバランスシートなのです。
 ですから、日経平均が大幅に下落すれば、銀行の自己資本比率(普通の株式会社の自己資本比率と異なりますが、大体、同じような計算をします)が大幅に下落し、お金が余っているにも関わらず、銀行の存続ができないということになります。
 つまり、銀行等の金融機関の存亡も、バランスシートに支配されているといえるのです。
 このような状態になりますと、銀行は回収可能性に疑義のある会社には貸せません。不良債権が増加すれば、ますます自己資本規制比率が下落してしまうからです。
 ですから銀行は、お金が潤沢にある会社に貸し出す行動に走ります。
 おかしな話ですが、銀行もやはり貸し出しをしなければ収益が上がらないからです。

 だからといって、銀行から安易にお金を借りますと、余った資金はどぶに捨てるといわれるお金の格言がありますように、会社の業績が悪くなりますと、余分に借りたツケが重くのしかかってきます。ですから、いくら銀行から貸し付けの依頼を受けても、安易に受けないことが賢明な経営者の行動と言えます。
 決して、銀行に貸しを作れるからといった発想は持つべきではありません。
 なぜなら、銀行には借りを作ったという認識が全くないからです。

 

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