「儲かる会社づくり」の指導歴50年。オーナー企業の経営に熟知した実力コンサルタント 井上和弘氏。この度、氏の経営ノウハウを1冊に凝縮した新刊『経営の核心102項』の発売を記念して、本書の読みどころや、儲かる会社づくり指導で特に大切にしている2つのポイント、本書の効果的な活用方法などをお話いただきました。
-50年間にわたるコンサルタント人生で培われたノウハウを102項に絞るのは大変だったのではないでしょうか?
まず、私自身、50年間も儲かる会社づくりのお手伝いをできるとは思ってもいませんでした。
これだけ長いことコンサルタントをされてきた同業者はまずいないのではないでしょうか。
本書は、私が今までに世に送り出してきた15冊を超える書籍のエッセンスを凝縮した、まさに集大成といえる1冊です。
本書をつくるにあたって、私が紹介してきたノウハウや、経営者に向けてのメッセージを整理したところ、1200を超える項目があることが分かりました。
そこから、さらに社長に絶対に押さえていただきたいものや、私が講演や指導で繰り返し語ってきたものを選び抜き、102項にまとめました。
厳選の過程で、昔のことを思いだし、感慨深い気持ちになったのと同時に、50年間一貫してお伝えしていることがあったとあらためて気づかされました。
それは、102項の中にもありますが、「会社を絶対に倒産させない」ということです。(編集部注:書籍では「企業経営者として絶対に守ることは会社を倒産させないこと」として収録)
私自身、幼少期に近所にあった工場が山のように倒産していくのを目の当たりにしてきました。そうした原体験もあり、コンサルタントになってからは、会社を倒産させないためにはどうすればいいのか考え続けました。
言うまでもなく、倒産の原因は借入金が返済できなくなってしまうことです。
運転資金に困って借入金を増やす会社がありますが、私に言わせれば中小企業は回収が遅すぎます。
現金決済や回収サイトの短縮、前払いをお願いできないか努力すべきです。そして売れない在庫を減らせば、短期借入金など生じません。
こうしたことを実践すれば、たくさんの借入金は不要ですよね。
また、銀行はお金が余っているとすり寄ってきます。銀行と仲良くすべきだと言う方もいますが、言われるままに借金をしてはなりません。
銀行というのは不況になるとすぐ手のひらを返します。
中小企業経営者の中には、借金をしてまで土地や建物といった固定資産を持とうとする方がいらっしゃいますが、ダメですよ。経営をするうえで、土地や建物などは必要ですが、何でも自前で持つ必要はありません。借りる方が賢明です。
もう一つの問題として、売上至上主義に陥っている会社が多すぎるということがあります。
今でこそ、私は財務の専門家のイメージが強いですが、コンサルタントをしていた当初は、マーケティングを指導していました。
そこで、「売上!売上!」となっている財務が分かっていない残念な経営者を何人も見てきました。
大切なことは、売上や規模の拡大ではなく、経常利益率です。そして、その利益以上に大切なものは会社に残る現金です。
利益を増やすためには、商品・サービスの付加価値を高めて売価を上げる。原価率を下げて粗利高をよくする。販管費を抑えて営業利益高を上げるの3通りのやり方しかありません。
利益や会社に残るキャッシュを増やす具体策に関しては、102項にもしっかり盛り込んでいます。