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社長業

第69回 人生のターニングポイント

繁栄への着眼点 牟田太陽

※本コラムは2025年4月の繁栄への着眼点を掲載したものです。

 一倉先生時代からのお客様から聞いた話だ。その方と一倉先生との出会いは、実のお兄さんからの薦めだった。当時、兄弟で別々の会社を経営していた。お兄さんの会社は規模も大きく羽振りも良かった。

 それに対して弟さんの経営する飲食の会社は規模も小さく借金も多かった。それを見かねたお兄さんは弟さんに経営の勉強をするように薦めた。「この人に付いてとにかく勉強をしろ」そう言われた弟さんは一倉 定先生の勉強会に参加をするようになった。

 数年間勉強するようになり、一倉先生からも顔と名前を覚えられるようになったころ、一倉先生とちょっとした考え方の違いから質問をした。「私はこう思うのですが」などと言った際に、「何を言ってるんだ君は」と一倉先生は大激怒をした。どうやら意見をしたと捉えたらしい。怒った一倉先生は、弟さんに対して、「二度と来なくていい」と言い放った。

 困り果てた弟さんは、セミナー終了後に神田にある弊会の事務所を訪ねた。そこで事情を話して明日の朝一番に一倉先生のご自宅に謝りに行きたいと頼み込んだ。一倉先生が明日の朝ならご自宅にいることを確認するとスタッフは自宅住所を教えた。

 勇気を振り絞り翌朝9時に自宅を訪ねると、なんと一倉先生は、「よく来たね」と自宅に招き入れてくれた。そこから一時間色々な話をしてくれた。それからというもの、よく可愛がってくれるようになった。会社も変わっていった。弟さんは、「あれが人生のターニングポイントだった」と話してくれた。「怒るというのは感情的なものだが、叱るというのはその人を思ってくれて叱るんだ。その裏には愛情がある。それに気づくか気づかないかで人生は変わる」

 「ウチの兄は叱られたことに腹を立てて、それ以来、参加しなくなってしまった。一倉先生の愛情に気づかなかった。その結果、会社は無くなってしまった。誘ってくれた方の会社が無くなるとは皮肉だね」と遠い目をしながら語ってくれた。付き合いが長い方だったが初めて聞いた話だった。

 ホイッスル三好の三好会長は、盛和塾の塾生で熱心に稲盛先生に付いて勉強をしたという。

 何度も何度も稲盛先生に、「ウチのラーメンを食べてください」と頼み込み、ついに先生が食べに来てくれることとなった。当時は、「活力ラーメン元氣一杯」という屋号のお店を数店舗経営していた。私も食べたことがあるが、豚骨系で美味かった。全部載せを注文するとスタッフが店内で銅鑼を鳴らす。そこに稲盛先生がいらっしゃることを想像すると少しシュールな感じもする。

 「どうでしょうか」恐る恐る訊ねると、稲盛先生は、「君のお店は掃除が良く行き届いていて綺麗だ。スタッフも元気がいい」と言われ会長は喜んだが、「しかし、ラーメンが不味い」と言われてしまった。ラーメンというのは好き嫌いがハッキリ分かれるので難しいところだ。

 ところが、会長は、「有難うございます。ラーメンを変えればいいのですね」と前向きに捉えた。そこから商品開発が始まった。そこで「ラーメンで中華料理を表現しよう」と思いついた。バリエーション豊かなメニューに、小籠包などお酒に合うメニューを開発し、内装も外装も中国から持ってきたような感じにし、揚州商人というブランドで新たにスタートを切った。お店は繁盛し、今では首都圏で37店舗を展開している。

 誰にでも、「人生のターニングポイント」は必ず訪れる。ただそれに気づくか気づかないかだ。

 失敗とは成長の原動力である。誰でも失敗は嫌なものだが、それを認めて糧にできるかどうかで人生は大きく変わる。成長の機会を自ら逸してはいけない。

※本コラムは2025年4月の繁栄への着眼点を掲載したものです。


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