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新技術・商品

第37話 「共感」がコロナ禍でのヒットにつながる

北村森の「今月のヒット商品」

コロナ禍のために、本来売れるはずだった商品が売れない状況となっています。それぞれの業界が本当に大変であるとお察しします。

 

そうした厳しい局面下で、では、ヒットしている商品にはどんな要件が備わっているのか。もちろん突発的な外的要因によって期せずして売れ行きを伸ばしたものもありますね。例えばボードゲームや縄跳び。ステイホームを余儀なくされるなかで、ネットの大手ショッピングモールでは昨年の同じ時期と比べて2倍以上売れたと聞きます。

 

しかしながら、外的要因によってヒットしたというだけではないのかも、と思わせる商品もあるのですね。その筆頭格が「バーミキュラ フライパン」ではないかと、私は感じています。

 

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愛知ドビーという名古屋市の町工場が今年4月に発売した新商品です。

 

どれくらい売れているか。わずか2カ月経った時点で、早くも5万個のオーダーを抱え、増産をかけているにもかかわらず。現在は4カ月待ちの状況と聞きます。私自身、4月の発売直後に注文したのですが、届いたのは6月下旬でした。

 

これ、鋳物ホーローフライパンなのですけれど、価格はというと、本体と蓋を合わせて2万円ちょっとするんです。かなり高いですよね。なのに、これだけ売れている。それも景気悪化で出費を抑えたい時期にです。

 

愛知ドビーは、2010年に初めて自社ブランド商品を世に出した町工場です。もともとは、ごく小さな下請けの鋳物工場で、現在の経営陣(2人の兄弟です)が親御さんから跡を継いだ時点で、当時の従業員は十数人、売上高3億円ながら債務超過が2億円という崖っぷちの状況だったそうです。

 

2010年に出したのは「バーミキュラ」と名付けた鋳物ホーロー鍋。これが一時は15カ月待ちになるほどの大人気商品になりました。無水調理ができるほど機密性が高く、とにかく料理が美味しく仕上がるという評判がクチコミで広がった。現在までに累計50万個を売っています。

 

そして今回、同じ鋳物ホーロー技術を生かしたフライパンの開発に挑んだわけですね。

 

購入したものが届いたので、使ってみました。まずは野菜炒めを作ってみたんですが、いつもなら野菜がくたっとくたびれた感じになるのが、随分と違ったのは確かです。火はしっかり入っているのに野菜がしゃきっとしている。

 

このフライパンって、「食材の水分を瞬間的に飛ばせる」のがうたい文句ですけれど、どこまで本当か、と正直疑っていました。なんだか抽象的な説明にも思えたので……。

 

でも、使ってみたら、ああこういうことね、と理解できた。

 

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次にやってみたのが、厚さ5センチ、重さ500グラム超の牛サーロインのステーキです。安価なオージービーフで試したのですが、焼き目を入れた後、蓋をして10分強で、オージービーフがまさに化けました。とてもいい按配に火入れがかなった。熱の伝わり方が絶妙ということでしょうね。

 

こうやって、いろいろと料理してみたくなるフライパンであることが、よくわかりましたね。

 

で、ここからです。2万円を超えるフライパンがどうしてヒットしたのか。まあ、すぐ思いつきそうな理由はありますよね。まず、バーミキュラというブランドがすでに評価を高めていたこと。次にこのコロナ禍によって、自宅で料理する人、また、できるならいい調理道具を手にしたいと思った人が増えたということ。

 

でも、それだけではない気がしました。

 

コロナ禍でも頑張っている町工場を応援したいという、消費者の「共感」が反映された結果かもしれません。

 

大事なお金をどこにつぎ込めば、あらゆる意味で満足できるのか、多くの消費者がそこを大事に考えたから、とも言えそうです。

 

愛知ドビーというこの町工場、十数年前には倒産寸前だったところから跡を継いだ兄弟2人が中心になって、鋳物にホーロー掛けする技術を必死に研究して、ここまで奮闘してきたという経緯がある。そのことを知る消費者は多いという背景が、今回のヒットに作用しているのではないでしょうか。

 

売れているから、人気だから、という理由だけではなくて、その商品の成り立ちや背景に踏み込んで商品を選ぶという考え方が、コロナ禍のもとでさらに大切にされ始めたのだと思います。これって、逆境下で踏んばっている飲食店や旅館などをなんとか応援したいと考える心理と同じことですね。

 

今年下半期も、こうした「制約ある生活環境を少しでも変えられ」、しかも商品の作り手に「共感できる」。そんな商品がヒットを呼ぶのかもしれません。

 

 

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