エネルギーの世界で、中東に依存したエネルギー事情が改善されるかもしれない、革命的な変化が生じている。世界の救世主となりえる、シェールガス革命がもたらす影響を考えてみよう。
シェールガス(以下オイルも含む)とは、シェール(頁岩・けつがん)層に含まれるガスや石油成分を回収して得られる天然ガスや石油のこと。「原油の寿命はあと46年」(IEA(国際エネルギー機関))と枯渇懸念があるなか、シェールガスの出現は、世界のエネルギー地図に変化をもたらす「革命」に相応しい。
この資源は回収に高度技術を要するが、米国中心に日本の総合商社や石油会社・プラント業界も既に開発に参加。米国は、2020年までに世界第3位のLNG輸出国、2040年までに石油輸入がなくなる「エネルギー自給達成」も予想される。
地政学的リスクに脆弱な日本のエネルギー戦略は、カナダのオイルサンド開発を含む北米の「シェールガス革命」により、大きな改善が期待される。ロシア産天然ガス輸入も重要だが、米国とカナダは先進国・民主国家で日本の同盟国。政治的安定性も含め心強さでは、ロシアとは比較にならない。
安定した供給源の多角化は、日本の価格交渉力強化、輸入コスト削減に寄与。マクロ的には、貿易赤字を縮小し、電力コスト抑制により産業競争力を支える。ミクロ的には、資源開発で商社業績を押上げ、川上の石油業界と川下の電力・ガス業界のコストを引下げ、海運業界にLNG輸送需要を喚起する等の効果がある。
世界経済が減速するなか、IT(情報通信)革命による世界経済の長期的成長のように、シェールガスがエネルギー世界全体の革命になり、今後の世界経済を牽引するのか注意深く見守ろう。
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