世界同時不況のため金融資産に大きな含み損を生じた方も少なくありません。そこで、改めて資産運用上のリスクの意味と種類を確認してみましょう。
1.リスクとは、不確実性のこと
資産運用の世界でリスクとは、失敗して損をする「危険性」という意味ではなく、運用開始段階では将来の運用成果が利益か損失かわからないという「不確実性」を意味します。つまり、利益を予想して損失が生じる場合は勿論のこと、予想よりも大きな利益になる場合もリスクと考えます。全ての金融商品にはリスクがあり、その軽減方法が歴史的に研究され、ノーベル経済学賞の受賞者にこの分野の研究者が多数います。
2.リスクの種類
リスクにはさまざまな種類があり、その内容を正しく理解してからでないと資産運用に進むのは危険です。「価格変動リスク」は、一般的にリスクと考えられているもので、株式などが刻々と価格変動することを指します。「信用リスク」は、株式や債券の発行企業が経営破綻すること。銀行が破綻した場合は、元本1,000万円とその利息までしか保証されない『ペイオフ制度』があるので、預貯金にも信用リスクがあります。「流動性リスク」は、お金が必要な時に換金に時間を要すことや解約手数料のことなどを指します。「金利変動リスク」とは、預貯金や債券の元利金が市場金利の変動の影響を受けること。「為替変動リスク」は、外貨建資産の元金や収益が為替レート変動の影響を受けること。現在の円高局面で外貨建資産に投資し、円安局面で円に換金すると為替差益を得られますが、反対になると為替損失を被ります。「カントリーリスク」は、新興国に投資した場合に、その国の政治経済の混乱により、市場閉鎖や国外送金の停止措置によって影響を受けることです。そして、現在はデフレ局面ですが、中長期的にはインフレが懸念され「インフレリスク」もあります。消費者物価上昇率以上に運用資産の収益率が高くならないと、資産価値は目減りします。毎年インフレ率に3%ずつ負けると、10年後には資産価値は3分の2以下に低下してしまうのです。
3.リスクを軽減することが大事
金融資産には複数のリスクが関わって、将来の資産価値や収益に影響を与えます。一時の日本人は「預貯金にはリスクがない。」と考えていましたが、預貯金にもインフレ、金利変動、流動性の各リスクがあり、ペイオフ解禁で信用リスクも追加されました。預貯金だけでリスクを避けて手堅く運用したつもりでも、実はさまざまなリスクに晒されるのです。リスクは金融資産ごとに種類も大きさも異なり、運用期間中も経済環境に応じて変動します。このようなリスクと上手に向き合って資産運用してゆくことが大切です。
以上