私たちICOコンサルティンググループでは、最近、特にM&Aのご相談が増えています。
M&Aでは2つのカンジョウを上手くコントロールすることが大切と言われています。それは、感情(気持ち)と勘定(お金)の2つのカンジョウです。
今回は、気持ちのカンジョウについて考えてみます。
ポイントは4つあります。
1.M&Aは、会社を売るのではなく、託すこと
2.従業員に漏れることに細心の注意を払う
3.買手を見に行く
4.良いアドバイザーを見つける
1.M&Aは、会社を売るのではなく、託すこと
「会社を売る」という言葉に抵抗を感じる経営者は少なくありません。
「先祖代々の会社を手放すなんて考えられない」「社員を裏切っているようで申し訳ない」と思われるオーナーも多くいらっしゃいます。
売手オーナーの多くは、「本当にM&Aで会社を売ってしまっていいのだろうか?」と最後まで悩まれます。
そんなオーナーは、次のように考えると、気持ちが楽になるはずです。
・このまま自分が会社を経営していても先がない
・経営環境は益々厳しく、今後、従業員の待遇をあげてあげられるか分からない
・だったら、自社よりもしっかりとした会社に引き受けてもらったほうが、社員や取引先にとっても幸せだ
M&Aは、「会社を売る」ことではなく、「会社を残すこと」であり、買手には、「会社を売る」のではなく、「会社を託す」のです。
こう思うと、気持ちはいくぶん楽になるはずです。
M&Aをした直後は、売手の心の中は、落ち着きません。心の平静を取り戻す唯一の薬は、『時間』しかありません。言い換えれば、時間が経てば、必ず落ち着きます。
一瞬は苦しいですが、長い目で見れば、売ってよかったと思えてくるのです。
しかし、そのためにも、会社を託せる相手を、時間をかけて見つけることが何より重要です。
2.従業員に漏れることに細心の注意を払う
M&Aでは「情報が洩れないようにする」が重要です。
売手のオーナーが一番気にするのは、従業員に情報が漏れることです。
通常、M&Aを行う場合は、仲介人がいます。仲介役は、仲介専門会社や銀行、コンサルティング会社が多いですが、当然、秘密保持契約(守秘義務契約)を結びます。
ところが、どこからか漏れてしまうのです。
したがって、「秘密保持契約があるから安心だ」とは考えずに、売手オーナーみずからが、情報が漏れないように常に気を付けるということが必要です。
例えば、M&Aの打合せをする場所を選ぶこともそうですし、書類のやりとりの仕方、当事者に再三気を付けるように注意を促すなど、細心の注意を払うことが重要です。
M&Aの契約を結ぶ前に、買手から、「会社の中核、幹部の方と面談させてほしい」と言われることがあります。
もし、M&Aで会社を買収してからすぐに、核となる幹部がやめてしまったら?会社を買った意味そのものが、半減してしまいます。実際に、M&A後に中堅幹部がやめてしまうケースというのは、ときどきあります。
M&Aは、会社同士の結婚ですので、文化が合わない、考え方が合わない、今までやってきていないことをやらされる、などなど、ストレスの種はたくさんあります。
買手としては、買ってしまってからではもう遅いので、なるべく、契約をする前に、幹部がどんな人か、辞める可能性があるのか、買ってから上手くやっていけそうか、少しでも見極めておきたい、と思うのです。
売手オーナーとしては、契約前に会社を売ることを幹部に伝えて、辞められてしまったら?社員に伝わって、社内が不安定になったら?などなど、色々なことを考えて、幹部に伝えるタイミングをできるだけ遅らせようとします。
かつてお手伝いしたM&Aで、契約間近までいきましたが、幹部面談をするかしないか、をきっかけに、売手と買手の間に溝ができてしまい、結果的に破談になったケースもありました。
売手オーナーが頑なに買手と幹部を面談させることを拒否した結果、交渉が中断してしまったわけですが、こうならないように、交渉がある程度進んだタイミングで、幹部にはM&Aの事実を知らせて、買手と会ってもらう、ということは覚悟しておかれたほうが良いでしょう。
一つの目安は、基本合意書という仮の契約書を結ぶタイミングです。
基本合意書を結ぶということは、登山でいえば7合目くらいまでは来ている状態です。
山頂が見えるこのタイミングで、幹部にはM&Aのことを伝えて、そう遠くないうちに買手と面談してもらうことを伝えるのがよいでしょう。
3.買手を見に行く
売手オーナーにアドバイスするとしたら、「この買手で本当によいのかな?」と思ったら、買手の会社を訪問されることをお勧めします。
ほとんどの場合、売手オーナーが重視するのは、「売却価格」ですが、本当にそれだけで決めてよいのだろうか?と悩む方もいます。
そういう場合は、相手先(買手)を訪問して、買手会社の雰囲気をぜひとも肌で感じてみることです。
オフィスはもちろん、トイレをきれいにしているか、従業員の表情はいきいきしているか、会社を訪問すれば、オーナーの価値観、考え方をより深く理解することができます。
かつてお手伝いした会社では、買手としてM&A交渉をしていましたが、提示価格は一番安かったそうです。
しかし、売手オーナーに、会社見学に来てもらったら、「あなたのような会社に売りたい!」と言われ、結果的にM&Aが成就したということもありました。
売手オーナーにとっては、お金はもちろんですが、周りから恨まれない、後ろ指さされないようにすることもとても大切です。
実際に会社見学を行って、コミュニケーションを重ねれば、耳だけでなく、目でも肌でも、買手を知ることでき、自信をもって、「あの会社に売られて良かった!」と思ってもらえる会社を見つけることができるでしょう。
4.良いアドバイザーを見つける
売手オーナーには、M&Aの経験豊富な専門家を見つけて、色々とアドバイスをもらうことをお勧めします。
特に、売手は最初で最後の経験であり、自分たちの言いたいことをどこまでぶつけていいのか?分からず、不安に思う場面が多くあります。
例えば、デューデリジェンス(買収監査)の対応一つとってもいえます。
デューデリジェンスでは、「あれもこれも全て準備してください」と言われます。
真面目な経営者ほど、
「あぁ、あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ。でも、社員にはばれないようにしなきゃ。あぁ、もし、このM&Aがうまくいかなかったら、引き続き自分が経営しなければいけない。そうなると、念のため来期の予算もつくったり、方針も決めなきゃ…」
と頭の中がパンクしてしまいます。
そんなときに、経験豊富な専門家に用心棒として盾になってもらうのです。
「この資料は、要らないです。忙しいのに、改めてつくる必要はありません。他の資料で十分ですよね。」と次々に来るリクエストを上手に捌いてもらうのです。
また、買手候補との交渉においても、売手オーナーの代弁者として、こちらの考え、リクエストを主張してもらうわけです。
私も、以前、お手伝いしたM&Aで、そのような役割をしていました。
ときに、買手側、あるいは、仲介会社とケンカしてでも、守るべきもの、守らなければいけないこともあります。その意味で、専門家をつけることは大切です。
なお、ほとんどのM&Aでは、仲介会社が間に入ることが多いわけですが、彼らは、やけに「早くしてください」とあおってきます。
直接口にすることはありませんが、早く成約に結び付けて、報酬を得たい、ノルマを達成したい、という思惑があけすけです。
本当によい仲介人とは、いくら時間をかけてでも、お互いに納得して契約に導いてくれるものです。
お互いの相性もありますから、色々な仲介会社と面談するとよいでしょう。
もし、M&Aでアドバイスしてくれる方が身近にいない、という場合は、お気軽にICOコンサルティンググループにお声がけください。


























