menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

人間学・古典

第103講 「論語その3」
吾、十有五にして学に志し、三十にして立ち、四十にして惑わず。 五十にして天命を知り、六十にして耳に従い、 七十にして心の欲するところに従いて矩をこえず。

先人の名句名言の教え 東洋思想に学ぶ経営学


【意味】
私は十五歳で学問を始め、三十歳でその基礎を修め、四十歳で人生の方向を定め、五十歳で天与の我が人生の使命を知り、六十歳で誰の言葉も素直に聞け、七十歳で想いのままに行動しても度を越さなくなった。



【解説】
 孔子の生涯にわたっての学問姿勢や心の変化を述べたもので、論語の中でも後世の人々に大きな影響を与えた一句です。この句から、十五歳を『志学(シガク)』、三十歳を『而立(ジリツ)』、四十歳を『不惑(フワク)』、五十歳を『知命(チメイ)』、六十歳を『耳順(ジジュン)』、七十歳を『従心(ジュウシン)』という言葉が生まれました。
 既に42講で取り上げましたが、日本の名著『言志四録』にも、似たような「少にして学べば、壮にして為すこと有り。壮にして学べば、老いて衰えず。老いて学べば、死して朽ちず」という句があります。
 青少年時代に学べば、壮年になって為すことがある。壮年時代に学べば、老年になって気力が衰えない。老年時代に学べば、死んでもその人望は朽ちないという意味ですが、「人生如何なる時であっても、勉学の価値有り」という勇気を与えてくれます。

 現代学問の特徴は知識の吸収を主眼としますが、これら二つの名言が示す学問の方向は少し意味合いが違います。やり直しの効かない一限人生だから、年齢世代に相応しい学問に取り組めということです。これを「年相応の修養処世の人間学」といい、修養学とは修行して個人の人格を磨く学問であり、処世学とは(人間は一人で生きている訳ではないから)世に対処するための学問になります。しばしば著名人の事件が報道され、「○○歳になってもあのような事件を起こすとは?」などと批判されますが、修養処世の学びが欠けていたからです。

 人間学は「前言往行(ゼンゲンオウコウ)の学問」といわれ、一般的には古人の言葉や行動を学ぶ学問です。しかし90年間の人生では、青年期は成長し、壮年期は社会に貢献し、老年期には衰退臨終を迎えますから、人生の変化に相応しい学びが必要となります。
 筆者の主宰する人間学読書会では、余命年数から逆算した「今・逆算法の学び」を心掛けます。刻々と消滅する余命の日々を自覚しますと、自然と掛け替えの無い有り難い日々となり、人々のお手本になるように生きてやろうとファイトが湧きます。

 曹洞宗の『修証義』という経典に「人身を得ること難し、・・最勝の善身を・・無常の風に任すことなかれ」とあります。輪廻転生の世であるが、人間の命(人身)を授かることは滅多にない。この最も勝れた我が身(最勝の善身)を頂きながら、何もしないままに漫然と死期を待つような(無常の風に任す)生き方をするな・・という人生奮起の教えです。

  「空高く 味を誇るか 柿一つ」(巌海)
 数年前の作った句です。葉を落とした隣家の柿の木、木の天辺に赤く蒸れた柿が一つ。一陣の風に身を委ねる柿の命であるが、秋空高く堂々とした生命感が伝わってきます。

 

杉山巌海

第102講 「論語その2」 益者三友、損者三友前のページ

第104講 「論語その4」 暴虎馮河、死して悔いなき者は、我ともにせず。必ずやことに臨みて恐れ、謀を好みて成す者なり。次のページ

関連セミナー・商品

  1. 社長の大義と実践経営

    音声・映像

    社長の大義と実践経営

  2. リーダーの心得 社長の経営洞察力篇

    音声・映像

    リーダーの心得 社長の経営洞察力篇

  3. リーダーの心得 好・不況時の社長心得篇

    音声・映像

    リーダーの心得 好・不況時の社長心得篇

関連記事

  1. 第69講 「帝王学その19」
    隋の煬帝は、あに甲仗足らざるがために、もって滅亡にいた至りしならんや。

  2. 第35講 「言志四録その35」
    耳を以て人の言を聞くことなかれ。

  3. 第10講 「言志四録その10」
    寝に就く時、懐を空虚にし、夜気を養うべし。

最新の経営コラム

  1. 【昭和の大経営者】ソニー創業者・井深大の肉声

  2. 「生成AIを経営にどう活かすか」池田朋弘氏

  3. 朝礼・会議での「社長の3分間スピーチ」ネタ帳(2024年11月20日号)

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 教養

    2014年12月号
  2. 社員教育・営業

    第1話 成長課題 管理職の部下育成術(1)
  3. 戦略・戦術

    第6回 「香港も今、変化している!」
  4. ビジネス見聞録

    今月のビジネスキーワード「SNS戦略」
  5. 採用・法律

    第23回 『東京五輪期間中の年次有給休暇の取得を制限できるの!?』
keyboard_arrow_up