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社長だけができる《幹部教育》の極意|講師インタビュー「〈自創式〉躍進経営」東川鷹年氏

ビジネス見聞録 経営ニュース

 社員がワクワク仕事できる仕組みが会社を伸ばす!社員53名の典型的オーナー企業だった「西尾レントオール」を、一部上場・社員一人当り利益300万円もの高収益企業に育て上げ、今はコンサルタントとして400社以上の企業の成長を支え続ける東川鷹年氏。今回は中小オーナー企業ならではの、社長にしかできない幹部教育の極意について伺いました。

■東川鷹年氏(ひがしかわ たかとし)/「自創経営」の創始者/自創経営センター 代表取締役所長/(元)西尾レントオール取締役総務部長
 自創経営」の創始者。社員53名の典型的オーナー企業だった西尾レントオールで、創業者の下、一貫して人事を担当。画期的な人財育成システム《自創経営法》で、2度の大不況、創業者の急逝など経営危機でも業績を上げ続け、東証一部上場、社員一人当たり利益300万円の高収益企業に創り変えた中心的存在。

 

「任すから任すに足りる人」を育てよ

東川先生の人財育成の原点について教えてください。

 建設機械や道路工事の重機などのレンタルを行っていた「西尾レントオール」。昭和53年の高度経済成長の波に乗って急成長しました。ところが3年後にオイルショックで一気に潰れる寸前になり、社内にも不安が漂い始めていました。

 当時総務部長だった私は、ある日突然、先代社長に呼び出されてこう言われました。

 「何が起きてもビクともしない会社をつくってくれ」と。

 それは社長の仕事でしょ!と言いましたが、「会社は人や。人事担当のお前が中心でやれ!」と一喝されました。

 どうすればいいのかを聞くと、「任すから任せるに足りる人」、具体的には、「万が一会社が潰れるようなことになっても独り立ちしてやっていける人」をつくってくれと言うことでした。

 そんな優秀な社員ができたら、その人は会社を辞めてしまいますよ!と言うとすかさず「そういう人が辞めない仕組み」もつくれと。そんなことできるかと思いましたが、逆にできたらものすごいことやなとも思ったんです。

 そこが始まりでしたね。約15年かけて、先代社長と二人三脚で人財育成の仕組みを作りました。

 

人の仕組みづくり自体が幹部の教育につながる

仕組みづくりを行う時に、重要な点はどこですか。

 経営そのものに似ています。

 社長はリーダーシップを発揮して全体の方向性を示す。そして信頼できる幹部や右腕が、それに従い具体的に行動して進めていく。この連携関係が重要です。

 私も先代社長に細かく指示はされず、あったのは大まかな方針だけでした。本当にこれでいいのかな…と思いながら提案を出すたびに、

「なんで俺の言うとおりにせんのや、俺はこんなこと言うてへん」とよく突っ返されたものです。

 一度、もう少し具体的に指示して欲しいと伝えたことがありましたが、すかさず「ならお前いらん。辞めてくれるか」と言われました。「俺が言うた通りに君ができても、それは当たり前や。部長なら自分で考えろ。それができないと言うなら、辞めてくれ」と真顔で言われたんですね。

 それで目が覚めたんです。エライことを言ってしまった、二度と言ってはアカンな、と思いました。分からないなりに自分で勉強して考えてまとめたものを持っていく様になりました。それでも安々とOKはでませんでしたけどね(笑)

 

先代社長は幹部の方に対してかなり厳しくされたということでしょうか。

 誰にでも厳しく言う訳ではなく、「この人」と思う人に「この時」という時に、物凄く厳しい言い方をしました。そして受けた人間は、それに応えるように幹部として強く成長していきました。

オーナー社長としての信頼できる人間への喝の入れ方なんですね。人の仕組みをつくり自体が幹部のをつくると言いながら、並行して幹部の育成と教育も進める。今になって振り返るとうまくやられたな、と感じますね。

 

幹部の育成に必要な「厳」と「仁」

 厳しさも大事ですが、それだけでは人は動きませんよ。先代はそのバランスの取り方が絶妙でした。

 例によってかなり叱られた後、デスクに戻り仕事をしていると、社長室からインターホンがかかってくるんです。「総務部長ちょっと!」またか…さっき怒られた所なのにと思って部屋に入ると様子が違う。

 「3時やな、そろそろ腹も減ってきたな。家内がパンを買うてきたから、一緒に食べようか」と。恐る恐る何の用ですか?と聞くと、

 「俺一人で食べるのもなんやし、今日は遅くまで頑張ろうと思うもんで、途中でちょっとおやつと思ってな」と、そんな一面もあった。言葉には出さないけど、ちょっとしたことでメリハリを付けて人の心を掴むのが上手な人でした。

 また年末には美味しいフグをご馳走してくれたりと、一年の労をねぎらう節目節目の思いやりも欠かさなかったですね。

 

楽しみながら仕事の厳しさを教える

 「教育が重要」と言う事で、本当に社員教育については必死にやりました。考えて行動する社員を一人でも増やすために、最初のうちは3ヶ月位全く休み無しでした。

 先代社長も同じようにずっとやってくれて、半年近くやった時に「ご苦労さん。本当にこれから楽しみやな。たまにはちょっと息抜きしようや」ということで、平日にゴルフに誘われたんです。

 私も久しぶりに下手なゴルフを楽しみました。3時半位に終わって、今日は帰れば5時位からゆっくりできるなと思い風呂に入り、着替えて外に出ると、社長が背広をしてネクタイを締めて待っていたんです。

 「せっかく遠方まで来たんやし、近くの営業所に激励に行こうや」と言うんです。私はスポーツウェアのままで行きました。それから社長とゴルフに行くときは必ずスーツ一式を持っていくようになりました(笑)

 遊びの用事も仕事に活かす。時間というものをとても大事にされました。

 例えば喫茶店へ入ると、紙ナプキンを渡される。この店を見渡して、儲かると思うか儲からないと思うか考えて書けと言うんです。

 従業員は何人、メニューの数や価格帯、席数はどれくらいか、家賃はどうか、従業員の売り方はどうか…などをパッと考えて「この店は儲かります」「いや儲かりません」などと言う遊びです。

 今回のCDでも、部下を伸ばす対話術の話がありますが、雑談であっても人を育てることができる、ということです。

 

社長にしかできない幹部教育の要諦

直接実務に関わる部分での幹部教育は何をされましたか。

 社長は月に一度、幹部向けに勉強会を開きました。それぞれの幹部は自分の目標を持っています。社長自身が黒板を使って、その目標に対しての問答をするんです。

 「君の目標はなんぼや」
 「利益を1千万上げる事です」
 「そのためにどうするんや」
 「売上を上げます」
 「どうやって?」
 「それをやればなんぼ上がる?」
 「原価は?」
 「経費は?」
 「それがダメになった時の代わりの策は?」

 …などと何回も何回も訊きました。

 社員教育との違いは、この問答の中で、社長自身がどうやって自社を大きくしていったのか。どんな時につまずき、やり方を変えていったのかと言う、トップとしての経営判断、経営者感覚も同時に教えていったということです。

 一般的な知識や戦術理論、リーダーシップの部分は外部研修でも身につけられますが、その会社ごとの根本的な思想や行動の原理というものは、社長にしか教えることができません。

 ある程度、課題を与えて自分で考えさせる。そして目を離さず、適切な質問をして自社としてどう行動するかを身につけさせる。

 守破離の原則通り、最終的にはどの幹部社員も自分流のやり方を掴んでいきますが、成長の都度、自社の原点は何か。我社のやり方は。これまではこうしてきた。今後はこういう風に在りたい…ということを、社長自らの声で、経験と思想を幹部に語っていく。そして考えさせることが大事だと思います。

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