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第65話 2015年中国経済に関する10大予測

中国経済の最新動向

 中国政治・経済の最新動向を把握するため、筆者はお正月を挟んで北京を訪れた。中国社会科学院、商務省研究院、外務省国際問題研究所の学者たちとの意見交換を行い、日本の経団連に相当する経済団体・中国企業連合会の段永基副会長兼四通集団公司会長とも面談した。現地調査の結果を踏まえ、2015年中国経済の10大変化を次の通り大胆に予測する。
 
1、GDP成長率が7%前後
 2014年第4四半期のGDP成長率は7.3%にとどまり、通年実績も政府目標7.5%を下回るものの7.4%だった。7.4%成長は天安門事件翌年(1990年)以来24年ぶりの低水準となり、政府目標割れはアジア通貨危機以降16年ぶりの出来事である。
 
 2015年は中国経済の成長減速が続くだろう。消費、投資及び輸出のいずれも伸び悩んでおり、政府目標の(7%成長へ)引き下げは避けられない。ただし、中国政府は金融緩和の実施やインフラ投資の拡大など景気刺激策の導入を断行するため、経済成長挫折の可能性が低く、7%前後の成長は達成できると思う。
 
2、複数の金融緩和策が実施される
 低迷が続く景気を刺激するため、中国政府は今年、商業銀行が中央銀行に預かる預金準備率の引き下げを2~3回実施するだろう。中央銀行による金利引き下げも2~3回実施される可能性が高い。
 
3、投資規模は7兆元にのぼる
 2015年は第12次5ヵ年計画(2011~15年)の最後の年となる。この計画によれば、2015年に鉄道分野の投資規模は2.8兆元にのぼる。国家発展改革委員会「重点分野における投融資に関する指導意見」(2014年)の中では、2014年、15年に着工する予定のプロジェクトは、中西部鉄道建設案件45件、自動車道路71件、河川整備43件、空港整備19件、都市間鉄道25件などインフラ関連の投資案件は合計で203件にのぼる。ほかの分野の投資を加えると、2015年の投資規模は7兆元にのぼり、リーマンショック後の4兆元規模の景気対策を上回る。ただし、今回は民間投資が主役で、金融危機時の財政出動とは性格が違う。
 
4、株価の上昇傾向が継続、乱高下リスクは要注意
 2014年上海株価総合指数は約53%上昇し、世界主要国ではトップクラスの上昇率を記録した。2015年、金融緩和の実施によって、資金は株式市場に流れやすく、株価の上昇傾向が続くだろう。上海株価総合指数は一時的に4000ポイントを突破する場面があると思う。インフラ関連、国有企業改革関連、医薬、環境保全などの分野は注目される。一方、急騰、暴落など株価の乱高下リスクは要注意である。
 
 昨年11月の「滬港通」(上海・香港間相互株式投資制度)に続き、2015年に「深港通」(深?・香港間相互株式投資制度)も実施される見通しである。
 
5、不動産価格の下落は続く
 金融緩和の実施によって、資金の一部は不動産分野にも流れ込む。昨年5月から下落が続く住宅価格は一時的に下げ止まる可能性が出てくる。ただし、住宅の過剰供給という状態に変わりがないため、住宅バブル破裂のリスクは依然として根強く、年間ベースの住宅価格は引き続き下落する。
 
6、人民元の為替相場は3~5%引き下げへ
 アメリカの量的金融緩和の終焉によって、新興国からアメリカへの資金還流が続く。そのため、2015年もドル高と新興国通貨安が同時に進行する。人民元切り上げの圧力は相対的に緩和され、元安方向へ転換する。人民元の為替相場は年間ベースで3~5%程度切り下げることが予想される。
 
7、中国がTPP交渉に参加する可能性も
 オバマ政権は米国のアジア戦略の軸足を中国けん制から米中協力にシフトしているため、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に中国を参加させる方針を打ち出す可能性が高い。
 
 実際、デニス・ブレア元米国家情報長官は2014年11月1日に開催された第1回年次大会「日米富士山会合」(国際関係や安全保障について日米の政府関係者、経営者、専門家らが対話する会合)の基調講演の中で、「交渉妥結後の環太平洋経済連携協定(TPP)に中国を加える」よう提案した。これはブレア氏の個人見解ではなく、オバマ政権の方針と見ていい。中国はTPP交渉に参加する可能性が出てくる。
 
8、自由貿易区が拡大へ
 上海自由貿易区の設立(2013年9月)に続き、2015年に広東省、天津市、福建省など3つの自由貿易実験区が発足する見通しである。
 
 一方、中国は韓国など複数の先進国との2ヵ国間自由貿易協定(FTA)を締結する可能性も高い。特に、中韓FTAが先行すれば、日本企業に不利益をもたらす恐れがあり、日本は有効な対応策を講じる必要がある。
 
9、アジアインフラ投資銀行(AIIB)に豪州・韓国も参加へ
 2014年12月、ニュージーランド政府が中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加すると正式に表明した。これによって、AIIB加盟国は24カ国にのぼる。これまでAIIBの加盟国は新興国と途上国ばかりだったが、ニュージーランドの加盟によって、先進国も参加する初のケースとなった。
 
 2015年、NZに続き、先進国の韓国と豪州の参加が予想される。最終的にはアメリカも参加するだろう。日本は孤立を回避するために、早急に参加を検討する必要がある。
 
10、外資の中国撤退が加速、一部の日系メーカーは「日本回帰」へ
 2014年中国の対内直接投資は1195.6億ドルで前年に比べ1.7%増だったが、日米欧先進国からの直接投資は軒並に急減している。そのうち、日本からは38.8%減を記録し、米国からも20.6%減、EUからは5.3%減となっている。先進国からの投資急減は、中国の製造業が生産過剰に陥ったに加え、人件費など生産コストも急上昇し、中国現地生産の魅力が大きく減退しているからである。
 
 ここに注目すべき動きは2つある。1つ目は年明け早々、香港最大財閥李嘉誠氏が率いる長江グループと和記黄埔の合併・再編を契機に、合併後の新会社である長江和記実業と長江実業地産の登記地を香港からケイマンに移したことである。投資嗅覚が鋭い李氏がチャイナ・リスクや人民元資産の先安を読んでいるため、一足先に香港から脱出した可能性が高い。
 
 2つ目は一部の日本メーカーの日本回帰である。円安の継続と中国生産コストの上昇によって、中国現地生産のメリットは薄くなる。一部の日本メーカー(例えばパナソニックやシャープ、TDKなど)は中国から工場を撤退し、日本回帰の動きが活発化する。
 
 要するに、2015年に先進国からの投資減少と中国からの資本撤退が加速するだろう。

 

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