3月といえば、節目の季節。
卒業式、人事異動、そして退職。
自分のことであれ、周囲のことであれ、
人生の転機となる出来事が集中することから、
1年で最も自らの一生を考える時期、といっても過言ではありません。
中でも、仕事のこと。
自分の進むべき道は何か。
このままでいいのか。
それとも変えるべきなのか。
もし進むなら、どこまで究めるか。
引き際はどうするか。
特に、引き際については悩ましいところです。
思い入れが強ければ強いほど
迷いが増し、一筋縄ではいかなくなります。
自らが中心となって進めてきたプロジェクトや
手塩にかけて育ててきた会社の存亡がかかっているとき、
どう対処し、どう判断するか。
その答えの1つが、今回紹介する
『それでもやる』にあります。
著者は、世界王者に3度輝き、一世を風靡した
人気プロボクサー・辰吉丈一郎選手。
41歳の今も現役選手として
4度目の戴冠目指してトレーニング中です。
といっても、37歳が定年のボクシング界にあって
41歳の辰吉選手は、いわば"定年退職者"。
ライセンスも失効していますので
もはやリングに立つこともできません。
それでも、自らの信念を貫き、現役選手として
日々の訓練に邁進しています。
辰吉選手はこれまで、
何度も常識やルールを覆してきました。
「それが規則だから…」という理由で
多くの人たちが泣く泣くリングを去る中、
特例をつくり出し、リングに上がってきました。
そんな例外がまかり通ったのは、
もちろん、辰吉選手の実績や人気あってのことと思いますが、
重い岩を動かしたのは、ただならぬ情熱です。
その熱き心が、本書の中に、あふれ出ています。
正直、私は辰吉選手があまり好きではありませんでした。
負けたら引退する、と言いながら、
前言撤回し、またリングに立つ。
全盛期からはほど遠い、見るも痛々しい姿で
負けても、またリングに立つ。
本当に多くの人が、「もういいんじゃないの?」と思ったはずです。
実際に引退勧告されたことも数え切れないことでしょう。
それでもなお、辰吉選手は情熱の炎を燃やし続けています。
その心は、
自分の道は自分で決める。
自分が納得いくまでやる。
あたりまえのことかもしれませんが、
なかなかできないことです。
ここまで徹底されると、脱帽です。
本物だけにしか到達できない生き様がここにあります。
社会や他人に引導を渡されるのも1つの道ですし、
どんなに泥くさくても、自分の道を歩み続けるのも1つの道。
あなたはいかがでしょうか。
今、自らの道を進んでいる人、
迷いの中にある人に
大きなエネルギーを与えてくれる一冊です。
尚、本書を読む際に効果的な音楽は、
マーラーの交響曲第二番《復活》です。
おすすめは、現代を代表するマエストロの一人、
ズービン・メータが指揮し、
ウィーンフィルハーモニー管弦楽団の演奏によるアルバムです。
歴史的名盤とともに、
沸々と生きる力が湧き上がってきますよ!