フォトクリエイトは学校写真やスポーツ写真を撮影し、ネットで販売するビジネスで成長しているネット企業です。同社の主要ビジネスはインターネット写真サービスで、2013年6月期の売上構成比は80%強を占めます。このビジネスは、学校行事やスポーツイベントなどにプロのカメラマンを派遣し、写真を撮影して、ネット上で消費者に販売するものです。
直感的にわかりやすいものに学校行事の写真があります。学校で卒業式や運動会などのイベントがあると、プロのカメラマンが撮影をして、後日学校を通じて写真の販売が行われます。その場合、先生と子供を通じて金銭のやり取りがあり、かなり煩わしいものです。
こういったケースで同社では、イベントにプロのカメラマンを派遣し、それ以降はネットを通じて直接購入者とやり取りをします。その場合、一般の人がアクセスしないように、会場においてパスワードを配布しています。
学校行事以外では、スポーツイベントや地域のイベントなども対象になります。おそらく、マラソン大会に参加したことのある人は実感としてわかるかもしれませんが、そのような経験がない人にとっては、このビジネスがどれだけ事業として成り立つものかなかなか実感しにくいと思いますので、少し具体例を用いてお話しします。
例えば、東京マラソンでは参加者が33,000人となり、同社が派遣するカメラマンは70人に及びます。そして、個人認識をゼッケンナンバーで行い、ランナー一人当たり30-40枚の写真を撮影するので、合計すると100万枚ほどの写真を撮ることになります。カメラマンの人数で割れば、1人1万4,000枚撮ることになります。これはかなり途方もない枚数でして、仮に5時間とすれば、1秒間に1枚弱というペースで撮っていることになります。一応、特定の撮影ポイントがあって、そこではランナーも意識的にポーズをとるようですので、カメラマンはそこに待機し、次々と撮影します。
この100万枚の写真を外注に出して、ゼッケンごとに区分けして、ネット上のサイトに掲載します。そして、参加者に暗証番号を伝え、参加者はサイトに写真を見に行って購入するという段取りになります。
おおよそ、4人に1人は購入するようです。写真は1枚1,500円から2,000円ですので、5枚も買うと10,000円となります。その場合、元データを10,000円で購入することもできますので、そちらを買う人も多いようです。仮に4人に1人が買い、1人当たり10,000円とすると、約8,000万円となりますが、単価10,000円はMAXですので、大きなマラソン大会でも1大会当たりではそこまで行かない計算となります。
本当にそんなに高い写真を買うのかと思ってしまいますが、カメラマンはすべてプロですので、やはりプロが撮った写真という部分に付加価値があるようです。たとえば、Jリーグの写真を撮るプロのカメラマンが撮ると、少年サッカーでもプロのような出来栄えの写真ができます。見本の写真を見ると、あっ、なるほどこれなら買いたくなるなと実感できます。
さて、同社が成長するためには、まずは人海戦術で写真を撮るわけですから、プロのカメラマンを集める必要があります。いま日本では、あらゆる分野で人手不足です。外食産業、小売業、物流センターなどのパート、アルバイト、工事現場でも職人さんの不足で工事代金が大幅に上がっています。
ところが同社の場合、プロのカメラマンを集める苦労はそれほどないようです。それは、画像の露出には紙からネットへの流れがあり、写真雑誌が大きく減少しているためです。ですから、プロのカメラマンが腕を競う場が縮小しており、同社のような企業と契約する必要があるようです。そういった面では、同社にとってフォローの風が吹いていると言えるでしょう。
《有賀の眼》
同社は決して、プロのカメラマンの職がなくなるから、そのような技術を活用しようとして会社を立ち上げたわけではありません。しかし、結果論として、プロのカメラマンの活躍機会がなくなる中でその受け皿として同社の存在がクローズアップされているということです。
今、多くの産業でこの失われた20年間のビジネスモデルそのものが問われています。特に、人に関しては深刻な問題になりつつあります。つまり、人余りの時代のビジネスモデルがここにきて急速に機能しなくなっているのです。
世界を見渡せば、ある面人は余っている状況ですから、海外で活躍する企業にはあまり関係ないかもしれません。しかし、国内では高齢化が進み、思うように必要な人材が集まらなくなっています。
そう言った点で、同社のように失われる職を代替するような職を創りだすという観点でビジネスを考えれば、意外な発見があるのではないでしょうか。また、そのような発見をすれば、相対的な優位性も見いだせる可能性があります。