先月開催された第147回「全国経営者セミナー」において、個人的に特に話を聞いてみたかった講師が二人います。
一人は、先月紹介した是枝裕和監督。
もう一人は、佐藤優氏です。
佐藤優氏は元外務省主任分析官で、作家として多数の著作を持つことで有名。
ぼくは佐藤氏の著作を愛読しているので、非常に楽しみにしていました。
セミナーでは、ロシア・ウクライナ戦争はもちろん、イスラエル・パレスチナ紛争、グローバルサウスや岸田政権についても言及。質疑応答も盛り上がり、あっという間の80分でした。
そこで今回は佐藤氏の本を紹介しようと決めたのですが、お気に入りが多く、選択が非常に悩ましい。
『国家の罠』、『自壊する帝国』、『紳士協定』、『亡命者の古書店』…
どれも夢中になって読破した本です。
ビジネスマンには、『調べる技術、書く技術』、『読書の技法』、『地政学入門』は必読。
若者向けの『仕事に悩む君へ はたらく哲学』は、むしろ経営者に読んでほしいくらいで、佐藤氏のオススメ本だけで、軽々1年分になってしまうほど。
そんな中、経営者、リーダー向けに、あえて一冊選ぶならば、『十五の夏』(著:佐藤優)
です。
選択した理由は2つ。
1つは、佐藤氏のファンという経営者でも、本書を読んだことがない人が多いこと。
もう1つは、現代の”知の巨人”たる佐藤氏の原点が、本書にあるからです。
今から約50年前の1975年夏。
高校1年生だった佐藤氏は、ソ連・東欧を40日に渡って1人旅。
つまり当時の社会主義国を旅した時の実録であります。
現代であっても、高校一年生が1か月以上もの間、ロシアや東欧を一人旅することはかなり珍しいはず。
まして当時においては、どれだけ異例のことだったか。
「日本と異なるから」という理由で社会主義国に強い関心を抱き、実際に自分の目で見るために行動を起こす高校生が、果たして何人いるでしょうか。それくらいのレベルですよね。
高校生の段階で、既に佐藤氏は常人とは異なる思考の持ち主だったと言えますが、その秘めたる能力が、この一人旅でどんどん磨かれ、開花していく。
スイス、西ドイツ、チェコスロバキア、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、ソ連…
約50年前と今と何が異なり、何が変わらないのか?
国際政治や社会を見る上でも貴重な学びと刺激になります。
行先が行先だけに、旅行記としても、この上なく面白い。
そして、人を育てるために、そして自分を育てるために何が必要かを考えさせられます。
“知の巨人”佐藤優は、いかにして育ったのか?
この機会に、経営者、リーダーに、ぜひとも読んでいただきたい一冊です。
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は、
『スメタナ:管弦楽作品全集』(CD三枚組)です。
チェコが生んだ偉大な作曲家で音楽家スメタナ。
今年は生誕200年にあたり、各国で多くの記念行事が予定されています。
チェコは本書で佐藤氏が旅した国の1つであり、旅情がふくらみます。
本書と合わせてお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回。