知識を増やす。
経験を積む。
より豊かに生きるため、働くために不可欠なことであり、
人生における醍醐味の1つです。
しかし、この知識や経験というのは、
なかなかのクセものです。
使いこなせれば大きな力になりますが、
下手をすると、むしろ自らの足を引っ張ります。
いわゆる、"頭でっかち"と言われる状態です。
なまじ知識が豊富にあるために
判断に迷いが生じる。
一歩踏み出す勇気が出ない。
知識をきちんと理解、消化しないままに
知った気になって失敗する。
時には、過去の成功体験が自分を縛りつけ、
自分で自分の首を絞めてしまう。
そんな方を見かけることが、本当に多くあります。
知識も経験も、たくさんあれば安心、増やせば増やすほどよい
といった具合に、単純な公式であればラクですが、
残念ながらそうではありません。
知識や経験を使いこなすにも
工夫や能力が必要です。
では、一体どうすればよいか。
その答えの1つが、今回紹介する
『太極拳が教えてくれた人生の宝物』
の中にあります。
著者のフランソワ・デュボワ氏はフランス人で
キャリア・マネジメントのスペシャリスト。
多くの著作や講師、経営者としても
知られています。
そのデュボワ氏が、自分の人生をリセットすべく
仕事を中断し、太極拳発祥の山で過ごした
90日間の体験記が本書です。
45歳の氏が、厳しい修行についていくことは
容易ではなく、いわゆるカッコイイ武勇伝ではありません。
むしろ、一般的に見れば、情けない男だ、
と思えることの方が多いかもしれません。
しかし、この行動のキッカケには
ビジネスマン共通の悩みや想いがあり、
修行途中の苦悩の数々も、わかりすぎるほど
わかるのではないかと思います。
頭でっかちにならずに、感じること、
行動することの難しさ。
印象的な師匠とのエピソードに、こんな対話があります。
「私の頭はいつでも軽い。頭が思いに囚われないから、
自分のためにエネルギーを温存できる。
君は逆だ。頭はいつも重い。
いろんな思いに囚われるから、
結局エネルギーがすっからかんだ。
いいかい、フランソワ。
大切なのは手放すことだ。
君はそれを学ばなければならない」
他にも、多くの社会人の示唆となるような
エピソードが数多く出てきます。
まるで自分が修行しているかのような気持ちになり
のめりこむように、一気に読んでしまうことでしょう。
本書を読む際に、おすすめの音楽は
ギタリスト・土門秀明氏の「Live in Tube」です。
土門氏は、ロンドンの地下鉄演奏者として
日本人初のライセンス取得者で、
10年にわたって地道に演奏活動を続けてきました。
やさしい、心温まる音色の中に、
ロンドンでの10年の道のり、魂が
詰まっています。
心にしみる相乗効果をぜひお楽しみください。