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教養

第97回『指導者のエゴが才能をダメにする ノムラの指導論』(著:野村克也)

眼と耳で楽しむ読書術


当コラムでも、何度か著作を紹介してきた
名将・野村克也氏が2月11日に天国に旅立たれました。
 
これから新刊が読めないかと思うと
残念でなりませんが、多数の既刊から学ぶことも
まだまだたくさんあるはず。
 
今回は感謝と追悼の気持ちも込めて、
昨年発売になった指導者向けの傑作、


97-1.jpg
 
 
を紹介します。
 
 
指導者として、いかに個を伸ばし、組織を伸ばしていくかが
本書のテーマ。
 
その柱の1つとなるのが、"指導法"について。
 
間違いだらけの"褒める指導法"として、
「褒める指導者」が増えていることへの違和感を語っています。
 
「人間というのは不思議なもので、褒められているうちは、
そこそこの努力で止めてしまうことの方が多いうえに、
さらに上を目指そうという意欲も失いがちだ」
 
「今の指導のように褒めてばかりいるとどうだろう。
うまくいっているときはいいが、
失敗や挫折にぶち当たったときに、
「どうやって乗り越えていくべきか」を考えることができずに、
大きなダメージを受けてしまう。
「もうこの程度でいいや。これ以上、しんどい思いをするのはゴメンだ」
褒められてばかりいると、どうしても苦しいことに
立ち向かおうとする気持ちが薄らいでしまうのではないか」
 
続けて、
 
「今の指導者たちは「叱る=怒鳴る」だと思っているから、
叱ることへの抵抗が生まれてしまっているのかもしれない。
叱る方法にもいくつもある」
 
と、効果的な叱り方について展開していきます。
 
過去の日本の指導は、厳しさが大前提で、
褒めなさすぎ、といっても過言ではなかったように感じます。
そこで、アメリカ式の「褒めて伸ばす指導法」が新鮮に映り、
どんどん取り入れられるようになったわけですが、
だからといって、褒めればいい、というものでもありません。
実際、褒められて育っているアメリカ人が、
もれなく好結果を出しているわけでもないですし。
 
本書における「褒める」「叱る」についての
野村式指導法の項目だけでも、買って読む価値があります。
 
また、個人的には
 
「技術を身につけさせる上で、指導者が忘れてはならないことがある。
それは「常に段階を踏んで教えていく」ことだ。
私は選手を指導する際、「基礎」「基本」「応用」の3つの段階に分けて考えていた」
 
「「基礎」「基本」「応用」を身につけていないと、
「なぜ失敗したのか」「なぜうまくいったのか」、その理由が見えてこない。
根拠がなく、たまたまうまくいっただけの結果オーライを繰り返しているようでは、
結果が出せなくなったときに、その打開策が見出せなくなる。
 
「弱い組織ほど「大事な根幹の部分を身につけようとしない」
という共通項を見つけた」
 
といったところも特筆ものです。
 
部下の育成はもちろん、組織の成長、拡大を
考える上でも、非常に示唆に富んだ一冊です。
経営者、リーダー必読!
 
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は


97-2.jpg

 
(演奏:パブロ・カザルス)です。
 
偉大なるチェロ奏者で、指導者としても評判の高い、カザルスの名盤。
名選手で名監督の野村克也氏と通じるものを感じます。
そして、ぼくにとって、チェロという楽器は、野球でいうならキャッチャーのイメージで
その点でも本書と相性がいいように思います。
合わせてお楽しみいただければ幸いです。
 
では、また次回。
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 
 

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