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教養

第131回『教養としての「ラテン語の授業」』(著:ハン・ドンイル)

眼と耳で楽しむ読書術

ロシアのウクライナ侵攻、長引くコロナ禍、記録的な円安…

激動の2022年の締めくくりに、

教養としての「ラテン語の授業」
(著:ハン・ドンイル、監修:本村 凌二、翻訳: 岡崎 暢子)

をお届けします。

話題の一冊で、書店で平積みになっているのを目にした方もいるかと思います。

タイトルに「ラテン語の授業」とありますが、
正直、ラテン語そのものに関する内容は、ごくわずかです。

ので、ラテン語を全く知らなくても、関心がなくても問題ありません。

それどころか、むしろあまりラテン語に関心がない人の方が
より楽しめる気もします。

というのも、本書はラテン語=古代ローマを入り口として、
歴史、哲学、宗教、経済、文化へとつながる総合的な教養講座だからです。

著者のハン・ドンイル氏は、バチカン裁判所の弁護士。

本書は、ドンイル氏が出身国である韓国の西江大学で行った講義を
まとめたもの。

教養的な内容はもちろん、韓国人の眼を通しての西洋、
さらには現代韓国との比較も随時出てくる点も、大きな読みどころです。

経営者、リーダーにとっては、特に下記の項目は必見!

  ・名句Carpe diem は農業に由来する言葉
  ・ローマカトリック教会の公教育とは?
  ・法学者グローティウスの主張
  ・人が哲学や倫理を求めた理由
  ・キリスト教がここまで普及した理由
  ・時間にまつわるさまざまな言葉
  ・宴がわかれば、ローマの文化がわかる
  ・自分が知っているものしか目に入らない

さらに、ホラティウス、ウェルギリウスら、古代ローマ人の名言もさることながら、
著者による言葉も印象的。

たとえば、

 「勉強を積めば知識人にはなれるかもしれませんが
  その知識を人々のために使えなければ知性人だとは言い難いものです」

 「学びとは、頭の中を知識で満たすことではなく、
  自分だけの歩き方や動き方を学ぶことではないか」

 「自分を客観的に見つめると同時に、
  外部の情報を受け入れる寛容さを持つのです。
  そうすれば見聞きするもの全てが深く心に残るようになるでしょう」

など、挙げればキリがないほど。

中でも、特に響いたのは、期末試験を前に学生たちに語った、という言葉。

 「私は皆さんがこの試験を通し、
  学問を前にして必要な心構えが何なのか
  少しでも感じ取ってほしいと思います。
  自分の持つべき知識がどれだけちっぽけであるか、
  学問の前で人間が持つべき態度は謙虚さだけだという事実を、
  試験を通してほんの少しでも感じて欲しいのです。
  これが私から皆さんに向けた最後の授業です」

これはビジネスにおいても、同じことが言えるのではないでしょうか。
人間の成長にとって重要な”謙虚さとは何か”を今一度考えるのにも、十分に
意義があると言えます。

経営者、リーダーにとって、清々しい学びになると同時に、大切なことが詰まったこの一冊、
ぜひとも読んでみてください。

尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は、
レスピーギ-交響詩「ローマの松」「ローマの噴水」「ローマの祭り」
(指揮:トスカニーニ、演奏:NBC交響楽団)

です。

巨匠トスカニーニの代表作であり、”歴史的名演”と誉れ高い名盤。
約70年も前の録音でありながら、今も色褪せない輝きは、
どこか古代ローマに通じるものを感じます。
ローマに想いを馳せながら、本書と合せてお楽しみいただければ幸いです。

では、また次回。

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