「だいぶ以前から経営している会社の経営状態が悪くなってきた。赤字続きで、コスト削減も限界までやってきたのだが、もはや利益もでない」
「かなりの在庫商品をかかえないと多種類の注文に対応できない。土地・建物、高額な機械といった固定資産をもたないと事業自体が継続できない。それらの流動資産・固定資産を購入するために銀行から多額の借金をして事業をすすめてきたが、もう現状の利益では返済が難しくなってきた」
最近はこんな話ばかり聞いている。
現在の事業を継続していっても経営は悪化するばかりで、何の解決策にもならない。どうしたらいいのだろう?というのだ。
こんなとき、銀行は経営改善計画をだしてくださいというが、もはや多くの会社がコスト削減を限界までおこなっている。遊休資産を売却して債務を減らしましょうと税理士や銀行に言われることもあるが、遊休資産を売っても債務圧縮の効果はどうみてもたいしたことがない。
こんな愚痴ばかり聞いていてもお互いいやになってしまう。
では、どうしたらいいのだろう?
損益計算書では売上げから売上原価を引いて粗利益がでてくる。そして粗利益から販売費一般管理費、いわゆる給与や家賃、通信費、光熱費などの経費を引いて営業利益がでてくる。
この販売費一般管理費を削減しようとするのが、おもに経費削減(コスト削減)といわれる。
だが、たいていはどこの企業もそんなことはやっている。
粗利益そのものを増やそうとするためには、仕入れ単価の交渉をして原価を下げるという手が一般的だが、最近は、事業じたいを見直すことで粗利益を増やすこころみをする企業も増えている。
「事業じたいを見直すことで粗利益を増やす」とはどういうことなのか?と疑問に思う方も多いと思うが、これがビジネスモデルというものなのだ。
たとえば、高級ホテル業界で無借金の優良企業といえば帝国ホテルだが、この会社の年間売り上げは24年3月期連結決算で48,676百万円、営業利益は2,324百万円。売上高営業利益率は4.77%となる。
この売上高営業利益率の一ケタ台はどの優良ホテルでも変わらない。それはホテルという土地・建物をもち、宿泊客を広告などで集めて利益を生むというビジネスモデルがホテル業界全般で同じだからだ。
だが、その事業じたい、ビジネスモデルじたいを見直すと他社とは違う高収益のビジネスモデルができあがる。
自分の本でも書いたが、株式会社一休という上場企業は24年3月期の決算でも売上高営業利益率27%をはじきだしている。これは1億円の売上げがあれば2,700万円が営業利益になるというものだ。
一休は、ホテルの空き部屋を扱う会社だが、一般の人が宿泊したいと思うようなホテルの、明日とか来週とかの空き部屋を、WEBサイト経由で安く募集販売し、仲介料をホテルからとっているのだ。
ただ単純にホテルを運営したり、ホテルの空き部屋を売っているだけならこの高収益はのぞめないはずだ。
債務超過や債務過多で経営がたちいかなくなった企業を再生させても、同じビジネスを今までと同じやり方で行っていくと再び破綻の道に向かってしまう。
自分のやっている事業・ビジネスモデルじたいをもう一度見直し、どうしたら付加価値がつけられるかがわかったときにはじめて高収益がついてくるものなのだ。これこそが先細りの事業を蘇らせる力になる。
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