次回、相続によって承継する会社所有の不動産に税金の滞納による差押がついていたらということについてふれるのですが、まずは手始めに、会社所有ではなく代表者死亡による相続時に、代表者個人が所有していた不動産に税金の滞納による差押がされていた場合、どうしたらいいのか? について書いてみようと思います。
故人が所有していた不動産に税金の滞納による差押がされていて、相続を決める過程で、まず最初にするべき作業は滞納金額を確認することになります。滞納金額明細書といったものが届いているのでそれらを探し確認します。不動産の時価が2,000万円で銀行の根抵当権1億円が設定されていて対応借入金も1億円近くある場合などは、もう一度法人と代表者個人の資産・負債のバランス、いわゆる修正バランスシートを作ってみて原点から相続すべきかを考えることになりますが、今回、滞納金額が少ない場合を例に考えてみます。
時価2,000万円の不動産で根抵当権に対応した銀行借入残が800万円、税金滞納額200万円とします(下記図)
この不動産の相続においては差押がついたままでは厄介なことになります。とくに、任意売買をするのなら事前に差押を解除する必要があります。解除条件は役所によっても、前提条件によって違います。
事前といっても不動産の引渡し以前と言う意味で、任意売買の手付金で税金滞納分を納付し差押解除しても買主側の了解が得られればよいわけです。
仮に、上記の例で引渡し・所有権移転時の残代金で差押が解除され、任意売買が行われたとすると、登記上は差押解除後に根抵当権抹消・所有権移転となり、同時の登記ができないため買い手にしてみればリスクが発生します。
そのため、買主がローンを組んで購入する場合は借主側の銀行から事前に差押を抹消してくださいという要望があります。
ただ、上記の例のような場合、相続人は死亡後なるべく早めに行動する必要があります。任意売買なら早めの売買したほうがいいことになります。税金の滞納には延滞金が計上されるからです。
相続人が複数いて代金の配分でもめている場合、任意売買が遅れ、結果として状況が悪くなることがあるので、法定相続分で共同相続した旨の相続登記を行い、買主に売買し、その後に代金の配分について協議する、いわゆる換価分割という方法が使えます。
関係法令
国税徴収法139条
滞納者の財産について滞納処分を執行した後、滞納者が死亡し、又は滞納者である法人が合併により消滅したときは、その財産につき滞納処分を続行することができる。
2 滞納者の死亡後その国税につき滞納者の名義の財産に対してした差押えは、当該国税につきその財産を有する相続人に対してされたものとみなす。ただし、徴収職員がその死亡を知つていたときは、この限りでない。
民法898条(共同相続の効力)
相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。