破綻しかけた会社、あるいは一度破綻した会社の事業をどんな形であれ再生させる場合、それがうまくいくかどうかは流動比率、当座比率にかかっているといっていいかもしれません。
流動比率はバランスシートで見ればわかるように短期で支払うべきものが、短期で資金化できる資産の金額内でおさまるか? ということを確認する指標になります。このバランスが崩れると借入れなどの資金調達が必要になったり、支払を延ばしたりということになります。ところが、再生途中の会社・事業は銀行借入ができず、負債の側が大きくなれば再び破綻の道を歩むことになります。そのため、このバランスを示す流動比率、当座比率の確認が重要になるのです。
別の言い方で表現すれば、コンパクトでバランスのとれた財務が重要ということです。
ところで、財務状況の確認では黒字か赤字かということがまず評価されますが、再生途中の場合はそれは二の次になります。どうしてかというと、利益をあげればあげるほど納税で資金は失われていくからです。
「そんなことを言っても利益の中から法人税や法人住民税を支払うのだから、利益が多ければ問題ないだろう」と反論する人が多いと思われますが、そもそもバランスシート上で、利益が現金・預金だけに蓄積されているわけではないのです。
現金・預金以外だと流動資産の中では、受取手形、売掛金、商品、前渡金といった勘定科目に利益が蓄積されてもいます。また、車輛・機械・ソフトなどの固定資産に利益が蓄積されていることもあるわけです。また、一部の繰延資産(注1)などのように資産価値に疑問がつくものに利益が化けていることもあるのです。
さらに、現金・預金以外の流動資産は額面価格をそのまま信じないほうがいいという特徴をもっています。
例えば受取手形、売掛金といった現金・預金に近いものでさえ相手先が倒産してしまえば絵にかいた餅となり、資産価値はゼロになることが多いものです。繰延資産などは資産と名前はついていますが、資産的価値は? というと疑問が残ります。
さらに、税法の仕組みでは回収見込みがなくなった資産も容易には資産価値0円とは認めてくれず、利益が減少したにもかかわらず、その減少した利益をまだ存在するものとして課税してきます。
監査を受けない会社、中小企業は税務会計を使って財務諸表を作りますが、税務会計のルールは容易には損失を認めず、ないはずの利益をまだあるものとして認識させ、より多く納税させるといっても過言ではないです。
ただ、そうはいってもこれをあまりに厳しく行うと納税者が倒産してしまうので懐柔策というものが存在します。
再生途中の会社であれば、利益も大切ですが、コンパクトでバランスのとれた財務を重視すべき点をご理解いただけたでしょうか。
注1: 繰延資産
税法での繰延資産は、 会社又は個人事業主が支出する費用でその支出の効果が1年以上におよぶものとなっています。会計上は本来費用だが、その効果が将来にわたっていることから一時的に資産として認められるもの とされています。創立費や開業費、開発費などがこれに該当します。