企業融資における資金使途は事業資金に限られます。とくに信用保証協会付融資などにおいては、借換融資など特別に認められた場合を除いては、旧債返済も認められないのが現状です(注1)
旧債返済も含め資金の使い道が借入の前提条件と異なり、それを銀行に事前に報告しないと、ペナルティをうけることになります。しかも、それら資金使途相違等が融資銀行によって判明するのは次の決算が終わり、決算申告書を提出した後になります。つまり半年とか1年とか経過してから始めて資金使途相違・流用が指摘されるわけです。
もっとも多いものは経営者の認識の甘さによるもので、たとえば、500万円の設備投資で融資申し込みをして満額融資してもらえたが、じっさいには100万円安くなり400万円で設備投資できた場合などで、差額100万円が設備資金として使われていないことが明白になり指摘をうけるケースや、Aという設備投資で信用保証協会付融資を申請したのに、別の設備投資をした場合などです。
これら設備投資がらみのものは決算申告書の固定資産減価償却内訳明細書や別表16でわかってしまいます。そしてそれが判明することにより経営者の悪意によるものではないとしても、新規融資がストップされる一因になります。しかもこれを解決する手段は、信用保証協会付であれば対応する融資の全額返済しかないのです。
ケースとしては少ないのですが、融資金の資金使途相違や資金流用で経営者に悪意のあるケースもあります。融資を受けた資金で投機を行ったり、他社に融資する場合です。ただ、これらも次期決算書を提出した段階でわかってしまうのがほとんどです。
「ほとんど」と書いたのにはわけがあります。資金の流用を金融機関側に気づかせないやり方もあるからです。じっさい、一定の条件がそろうなら金融機関をだますことはできるものです。では、どんな条件がそろい、どんなやりかたなのか?を過去に私が直接経験し、雑誌「近代セールス」にも掲載されていた会社の例から、次回書いてみようと思います。
ただ、くれぐれも、資金使途相違や資金の流用はバレるものだと認識しておいたほうのがよいということに変わりはないので注意してください。
注1:東京信用保証協会 約定書
東京信用保証協会(以下甲という。)と 〇〇(以下乙という。)は、信用保証協会法第20条第1項第1号にもとづく保証(以下「保証契約」という。)に関して次の各条項を約定する。
(旧債振替の制限) 第3条
乙は、甲の保証にかかる貸付(以下「被保証債権」という。)をもって、乙の既存の債権に充てないものとする。 ただし、甲が特別の事情があると認め、乙に対し承諾書を交付したときは、この限りでない。