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<事例―15 米国高級ホテル フェアモント・コプリー・プラザ・ホテル(B2C)>盲導犬になれなかった犬をホテルの接客犬にしてブランド力を高めたホテル・・・それがフェアモント・コプリー・プラザ・ホテルだ

酒井光雄 成功事例に学ぶ繁栄企業のブランド戦略

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 ●ブランドは、思わぬものが資源になる
 
 ブランドの資源として、企業が活用できるものには、次の9つの領域が存在する。
 
 例えば、
 
 ○企業面:企業理念・社会的使命・経営者の考え方・歴史・店舗デザイン・社屋・社風・社会貢献活動・業界で知られた取引先など
 
 ○商品面:商品機能・性能・価格・デザイン・ブランド名・特許・実用新案・デザインなどの受賞歴・商品関連ツール(カタログ・リーフレット・包装紙・手提げ袋など)など
 
 ○サービス面:接客・電話対応・アフターサービス・顧客満足度・サービス商品・顧客の階層別対応など
 
 ○顧客面:上得意顧客・著名人や文化人の顧客・専門家の顧客など
 
 ○販路面:都心のSC・デパート・空港など付加価値の高い販路、直営店・ネットショップ・価格訴求を行なわない販路など
 
 ○販売方法面:他にないセルフ販売や対面販売・独自のネット販売やテレビ通販・他にない自販機販売(例:ガチャポン)など
 
 ○コミュニケーション面:広告やプロモーション・HPやソーシャルメディア上のコンテンツ・動画コンテンツ・CMソング・広告などのキャラクターや広告タレントなど
 
 ○人材面:個性のある経営者・他にない魅力や個性、才能を発揮している社員、パート、アルバイト、外国人社員の活用・企業や社員が取得している資格など
 
 ○外部評価面:メディアに紹介された過去の報道内容・書籍での事例紹介・ソーシャルメディア上で紹介された過去の報道内容とコンテンツ・ネット上での評価や評判・業界ランキングや覆面調査結果など
 
 こうした要素が多ければ多いほど、他社にはない独自の企業資源になり、その力を発揮することで企業のブランド価値は飛躍的に向上する。自社の資源づくりで重要なのは、注力する資源が他社にない力を発揮できるかどうかにある。どの企業でも取組んでいる内容だと、自社の優位性は発揮できないからだ。ブランドは日本人が好きな横並び発想でなく、独自性が何より大切だ。
 
 
 ●ホテルのブランドアイコン(目印)に選ばれた犬
 
 ホテルがブランド価値を高める場合、建物の外観や内装、スタッフによる行き届いた接客、レストランの評価といった要素が存在するが、これらはどの高級ホテルでも取組んでいる施策であるため、これだけで自社の優位性を発揮するのは難しい。
 
 アメリカのボストンにある高級ホテル「フェアモント・コプリー・プラザ・ホテル」は2004年に改修を終え、自社のブランド価値を高める新たな資源を探していた。
 
 するとニューヨークで盲導犬になる訓練を受けていた雌のラブラドール・レトリバーが軽い視覚障がいがあることがわかり、盲導犬になれなくなったことを知る。そこでこの犬を同ホテルが引取り、「接客犬」として採用するという英断を下し、その名をケイティと名付ける。ケイティの仕事は、ホテルのロビーを訪れるゲストたちを幸せな気持ちにさせ、歓迎することだ。
 
 接客犬として採用されたケイティは瞬く間に人気者になり、ホテルの宿泊者がケイティとの散歩を望む場合には、3ヶ月前から予約する必要があるほどになった。人気が出るにつれ、ケイティ宛てにメールが入るようになったためケイティは自分のメールアドレスを持つことになり、さらにホテルのギフトショップではケイティのミニチュアモデルが販売され、ロビーにはケイティ専用のソファーまで用意されることになった。
 
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<フェアモント・コプリー・プラザ・ホテルの事例に学ぶこと>
 盲導犬になれなかったというハンデを乗越え、ケイティが新たにホテルという職場に転職し、人々に愛されることになった。このエピソードは同ホテルのブランド資源になっただけでなく、独自性のある『物語性』を創出した。
 このホテルが発揮した「動物への愛情」「痛みを知る人だから発揮できる優しさ」「接客を犬に任せるというユーモア」が新たなブランド資源となり、同社独自の価値に昇華させた訳だ。
 ブランドは理屈(左脳)だけでなく、情(右脳)の要素が欠かせない。
 
 
 
 
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<事例―14 一休(B2C)>あえて上質な企業と顧客を狙った・・それが一休だ前のページ

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